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腹膜透析のバッグ交換実施手順とは。よくあるトラブルへの対応と患者に伝えておく注意点

腹膜透析は、血液透析のように透析施設に通うことなく、患者自身で在宅でのバッグ交換を行える人工透析療法です。仕事やプライベートなどの生活スタイルを維持しながら透析を続けられるため、血液透析と比べて自由度が高くなります。

一方で、患者自身や家族による透析液の交換が必要になることから、誤った操作によってトラブルが起きる可能性もあります。

病院・訪問看護ステーションでは、清潔な操作かつ正しい手順で腹膜透析を実施できるように丁寧な指導を行うことが求められます。

この記事では、腹膜透析の準備や実施手順、よくあるトラブルへの対応方法、患者に伝えておく注意点について解説します。

出典:厚生労働省『個別事項(その7)


目次[非表示]

  1. 1.腹膜透析のバッグ交換を行う前の準備
  2. 2.腹膜透析を実施する手順
    1. 2.1.CAPDの場合
    2. 2.2.APDの場合
  3. 3.腹膜透析のバッグ交換時によくあるトラブルと対応
  4. 4.腹膜透析患者に伝えておく注意点
    1. 4.1.➀記録ノートへの記載を忘れないようにする
    2. 4.2.②排液の状態を確認する
  5. 5.まとめ


腹膜透析のバッグ交換を行う前の準備

腹膜透析のバッグ交換を行う前には、安全かつ清潔な状態で行えるように環境を整えておく必要があります。


▼腹膜透析のバッグ交換を行う前の準備

  • 時計やアクセサリーを外して手洗いを行う
  • マスクを着用する
  • 安全にバッグ交換を行える場所を確保する
  • バッグ交換を行う部屋・机の上を掃除する


手指が汚染されていると、バッグ交換の際に細菌が付着・侵入して合併症を引き起こす可能性があります。手洗い・手指の消毒・マスクの着用を行い、透析液のバッグや周辺器具が汚染されないようにすることが必要です。

また、ペットや子どもが出入りしない安全な場所を選ぶとともに、バッグ交換中は窓・扉を閉めておきます。部屋はこまめに掃除して、ゴミや汚れがない状態を保つことも重要です。



腹膜透析を実施する手順

患者自身や家族がバッグ交換を行う場合は、正しい操作手順について説明を行います。事前に医療従事者とともに練習を行うとスムーズに腹膜透析を開始できます。

また、訪問看護によって患者のサポートを行う場合は、訪問看護師が正しい操作を行えるように病院の医師・看護師が指導することが求められます。


CAPDの場合

CAPDは、1日に数回のバッグ交換を手動で行う方式です。透析液のバッグと周辺器具を携帯すると、職場や宿泊先などでも透析を行えます。

透析液のバッグは、排液用の空バッグと透析液が入ったバッグが一体型となったツインバッグを使用することが一般的です。


▼CAPDによる腹膜透析のおおまかな手順

  1. 腹部のカテーテルと透析液バッグのチューブを接続する
  2. 腹腔内に貯留している透析液を排出する
  3. 新しい透析液を腹腔内に注入する
  4. 透析液バッグが空になったらカテーテルから切り離す


透析液の排液・注入にかかる時間は、1回30分程度です。バッグ交換を行う際は、激しい動作は避けてリラックスして過ごすようにします。

※詳細な操作方法は、医療機器メーカーや担当医にご確認ください。

出典:厚生労働省『個別事項(その7)


APDの場合

APDは、夜間の就寝中に専用の機械を使って自動で透析液を交換する方式です。就寝中のまとまった時間を確保して透析液を交換するため、日中は比較的自由に過ごすことが可能です。


▼APDによる腹膜透析のおおまかな実施手順

  1. APD装置の電源を入れて、腹部のチューブを接続する
  2. APD装置と透析液バッグ・排液用バッグのチューブを接続する
  3. APD装置との接合が完了したら透析を開始する
  4. 起床後、APD装置から透析液バッグ・排液用バッグを外す


APDによる腹膜透析を行う時間は、1日8~10時間ほどとなります。透析量が不足する患者の場合には、夜間の就寝中にAPDによる透析を行い、日中はCAPDで手動によるバッグ交換を行うケースもあります。

腹膜透析の方式についてはこちらの記事で解説しています。

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※詳細な操作方法は、医療機器メーカーや担当医にご確認ください。



腹膜透析のバッグ交換時によくあるトラブルと対応

腹膜透析のバッグ交換を行う際に、誤った操作をすると細菌による合併症や透析不良につながる可能性があります。トラブルが起きた際にどのように対応するのか、患者や家族に説明しておくことが重要です。


▼よくあるトラブルと対応

トラブルの内容
患者が行う対応
チューブの接続部を汚染してしまった
クランプを閉める。チューブの2箇所を固結びまたは折り曲げて輪ゴム※1で縛り、主治医へ連絡を行う。ミニキャップの場合は新しいキャップを装着する※2
透析液バッグに穴あきや異物の混入がある
新しい透析液バッグに交換する。
透析液バッグのチューブや接続部分に亀裂がある
新しいものに交換する。
透析液の種類や濃度を間違えた
注入前であれば正しい透析液に交換する。注入後は速やかに主治医へ連絡する。
チューブのつなぎ目から液漏れしている
クランプを閉めて注排液を中止したあと、速やかに主治医へ連絡する。
カテーテルのチューブや接続部に穴あきや亀裂がある
破損部分より腹部に近い場所を折り曲げて輪ゴムで縛り※1、減菌ガーゼとビニール袋で覆ってから主治医へ連絡を行う。
注排液がうまくいかない、いつもより時間がかかる
チューブの折れ曲がりがないか、クランプが開いているかを確認する。また、腹部よりも低い位置に排液用バッグを置く。


※1…クランプがある場合には使用してもよい。

※2…ミニキャップ以外の場合は、清潔なガーゼで先端を覆う。



腹膜透析患者に伝えておく注意点

腹膜透析を実施する際は「正しい方法でバッグ交換を行えているか」「合併症につながる異常はないか」などを主治医が確認できるようにしておく必要があります。患者に伝えておく注意点には、以下が挙げられます。


➀記録ノートへの記載を忘れないようにする

透析液バッグを交換した際は、記録ノートへの記載を忘れず行うように伝えます。

記録ノートは、患者の身体状態や透析の状況を主治医が確認するだけでなく、患者に腹膜透析管理の意識づけを行う目的があります。

通院時に記録ノートを確認することで、患者に合った透析処方の見直しや異常の早期発見につなげられます。

なお、腹膜透析で使用する記録ノートには、バッグ交換に関する情報のほかにも体重・血圧・飲水量などの複数の項目を記載する必要があります。

腹膜透析の記録ノートの詳しい項目や書き方は、こちらの記事で解説しています。

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②排液の状態を確認する

腹膜透析の排液は、黄色く透明な状態が正常となります。

注排液が終わったあとは、排液の状態を確認する習慣を身につけてもらう必要があります。異常が見られる場合には、排液バッグを廃棄せずに主治医に連絡するように伝えておくことが重要です。


▼排液に異常がある状態

  • 白く濁っている
  • 白い糸状のふわふわとした塊(フィブリン)が混じっている
  • 血が混じって赤くなっている


腹膜透析の排液についてはこちらの記事をご確認ください。

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まとめ

この記事では、腹膜透析について以下の内容を解説しました。


  • 腹膜透析を行う前の準備
  • 腹膜透析を実施する手順
  • バッグ交換時によくあるトラブルと対応
  • 腹膜透析患者に伝えておく注意点


腹膜透析は、安全な場所かつ清潔な状態で行うことが必要です。手洗いや部屋の掃除などを徹底する習慣を身につけてもらうとともに、医療機器メーカーが提示する正しい手順・操作でバッグ交換を行えるように指導する必要があります。

また、合併症や透析不良などの問題を早期に発見するには、患者の状態を主治医や訪問看護師で共有できる体制を整備することも求められます。

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