腹膜透析における正常な排液とは。 異常の判断と考えられる原因
腹膜透析では、透析液を腹腔内に注入して、一定期間貯留させたあと排出することによって血液の浄化を行います。その際、排液の観察を行い、異常が見られる場合には速やかに主治医への連絡を促す必要があります。
病院・訪問看護ステーションでは、腹膜透析における正常な排液と異常の判断について患者への情報共有を行い、日常的に観察する習慣を身につけるように指導することが重要です。
この記事では、腹膜透析の正常な排液や異常の判断基準、観察する際の注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.腹膜透析における正常・異常な排液とは
- 2.排液の異常がある場合に考えられる原因
- 3.腹膜透析患者における排液まわりの注意点
- 3.1.➀感染経路がないか確認する
- 3.2.②排液時間を測定する
- 3.3.③排液量を測定する
- 4.まとめ
腹膜透析における正常・異常な排液とは
腹膜透析を行ったあとの排液は、黄色く透明な状態が正常といえます。
メーカーから提供される下敷きやメモ用紙などの上に排液バッグを乗せて、文字が読めるくらいに澄んでいる場合には正常と判断できます。
一方で、以下の状態が見られる場合には排液に異常があると考えられます。
▼排液に異常がある状態
- 白く濁っている
- 白い糸状のふわふわとした塊(フィブリン)が混じっている
- 血が混じって赤くなっている(血性排液)
排液に異常が見られた際には、医療機関での検査・診断を実施する必要があります。排液バッグを破棄せずに、主治医へ連絡して病院を受診するように伝えておくことが重要です。
排液の異常がある場合に考えられる原因
排液の異常が見られる場合には、腹膜炎が疑われます。腹膜炎とは、腹腔内に細菌が入ることによって起こる感染症です。
排液の混濁は腹膜炎の主な症状の一つとされており、腹痛や発熱、嘔気・嘔吐などの症状が見られるケースもあります。
腹膜炎になると、腹膜機能の低下や被嚢性腹膜硬化症(EPS)(※)の進行につながる可能性があるため、予防と早期の治療が重要といえます。また、検査によって腹膜炎と診断した場合には、抗菌薬を処方して治療を行います。
腹膜炎になる原因には、外因性感染と内因性感染の大きく2つに分類されます。
▼腹膜炎になる主な原因
外因性感染 |
内因性感染 |
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そのほか、血性排液が見られる場合には、腹腔内の出血や女性の月経などが原因の可能性も考えられます。
※長期間の腹膜透析や頻回の腹膜炎によって腹膜劣化(肥厚)が起こり、腸管周囲の腹膜が広範囲に癒着する合併症。
腹膜透析患者における排液まわりの注意点
腹膜透析は、日常的に排液を観察する必要があります。病院・訪問看護ステーションでは、患者に対して以下の確認・記録を行うように指導することがポイントです。
➀感染経路がないか確認する
外因性感染による腹膜炎を予防するには、バッグ交換を行う前に感染経路がないかを確認することが重要です。
▼感染経路の確認ポイント
- 手洗いを十分に行っているか
- 透析液バッグに液漏れやにごりがないか
- チューブのジョイント部分に触れていないか
- チューブに破損や切断がないか など
また、出口部感染・皮下トンネル感染を防ぐには、入浴・シャワーによる洗浄や消毒によって出口部のケアを行うことも欠かせません。
▼出口部のケアについては、こちらの記事をご確認ください。
②排液時間を測定する
透析液の排液時間は、カテーテルに異常がないか確認するために必要な情報となるため、毎日測定・記録するように指導します。
通常よりも排液に時間がかかる場合には、排液不良が起きている可能性があるため、主治医への相談を促します。
▼排液不良が起きる原因
- カテーテルの位置がずれている
- フィブリンによってカテーテルの内側が閉塞している
- カテーテルやチューブが折れ曲がっている など
③排液量を測定する
透析液のバッグ交換を行ったあとは、排液量を測定しておく必要があります。
排液の重量は、腹膜透析によって十分な透析量を確保できているかを確認する情報の一つとなります。注液量から排液量を差し引くことによって、腹膜透析による除水量を算出できます。
患者の腹膜機能を踏まえて注液量・貯留時間・交換回数・濃度などを設定することで、適正な透析につながります。
▼排液量や排液の状態を記録するノートの書き方については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、腹膜透析の排液について以下の内容を解説しました。
- 腹膜透析の正常・異常な排液について
- 排液の異常がある場合に考えられる原因
- 腹膜透析の排液を観察する際の注意点
腹膜透析の排液に混濁が見られる場合には、腹膜炎が疑われます。腹膜炎になると腹膜機能の低下や被嚢性腹膜硬化症(EPS)などを招く可能性があるため、排液の観察を行い早期治療につなげることが重要です。
また、カテーテルや出口部からの感染を防ぐには、感染経路がないかを確認して清潔な状態でバッグ交換を行うことがポイントです。そのほか、排液時間や排液量を測定して、問題なく腹膜透析を行えているか確認する必要があります。
訪問看護によって腹膜透析患者のサポートを行う場合には、排液の記録について主治医と円滑に情報共有できる体制を整えることも欠かせません。
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