腹膜透析は記録ノートによる管理が重要! 書き方と確認するポイントとは
体内の腹膜を利用して余分な水分・塩分や老廃物の除去を行う腹膜透析は、自宅で透析液のバッグ交換を行えることから、生活上の制約が少ない透析方法です。
医師は、患者の腹膜機能や健康状態に応じて腹膜透析の処方を決定する必要があり、日常的に観察を行うことが求められます。
病院・訪問看護ステーションにおいては、記録ノートに腹膜透析の状況を記載するように患者へ指示を行い、主治医への情報共有を行うことが必要です。
この記事では、腹膜透析による記録ノートの書き方や確認できることについて解説します。
出典:厚生労働省『個別事項(その7)』
腹膜透析の記録ノートとは
腹膜透析の記録ノートとは、患者の身体状態や腹膜透析の状況などを患者自身が記録して主治医へ共有するノートのことです。病院・訪問看護ステーションが配布して、患者自身で毎日記録するように指示を行います。
記録ノートは、患者に合わせた腹膜透析処方を検討するとともに、体調の変化や合併症のリスクを早期発見するために重要となります。
▼記録ノートを利用する目的
- 必要な透析量を確保できているかを確認する
- 健康状態や合併症のリスクを発見して処置を行う
- 患者に腹膜透析管理の意識を持ってもらう など
腹膜透析では、患者の腎機能による除水を考慮したうえで、透析液の貯留時間・交換回数・濃度・量などの透析処方を決定します。そのため、飲水や尿量、体重などを記録して必要な透析量を確保できているかを確認することが必要です。
また、腹膜透析を継続すると患者の腹膜機能が経時的に変化するほか、腹膜炎をはじめとする合併症を発症するリスクがあります。このようなリスクを早期発見するためにも、記録ノートを通して患者の健康状態を把握することが重要です。
さらに、患者自身で身体状態を毎日記録することは、腹膜透析に関する健康管理の意識向上を促す目的もあります。
腹膜透析における記録ノートの書き方
腹膜透析で用いる記録ノートには、一般的に以下の内容を記載します。
▼記録ノートの記載項目
項目 |
書き方 |
日付 |
測定した年月日を記入する |
体重(kg) |
毎日一定の条件で測定した体重を記入する |
血圧(mmHg) |
毎日一定の条件で測定した血圧を記入する |
体温(℃) |
1日1回体温を測定して記入する |
貯留時刻・時間 |
透析液を腹腔内に貯留した開始時間と終了時間を記入する |
排液時間 |
排液にかかった時間を記入する |
注液量(mL) |
注入した透析液の量を記入する |
排液量(mL) |
透析後の排液量を測定して記入する |
バッグ交換による除水量(mL) |
注液量から排液量を差し引いた水分量を記入する |
排液の状態 |
正常・混濁・フィブリン(白い繊維状の塊)などの状態を確認して、当てはまるものを選択する |
尿量(mL) |
1日の尿量を測定して記入する |
飲水量(mL) |
1日に摂取した飲水量を記入する |
排便(回) |
1日の排便回数を記入する |
出口部の状態 |
正常または異常(赤み・腫れ・痛み・かさぶた・出血・濃)の状態を観察して、当てはまるものを選択する |
備考 |
食事や睡眠の状態、体調の変化などを記録する |
記録ノートの内容から確認できること
通院時に記録ノートを持参してもらうことで、患者の透析状況や体調の変化などを把握して、必要に応じた処置を速やかに行えるようになります。記録ノートの内容から、以下の状況を確認することが可能です。
▼記録ノートの内容から確認できること
測定内容 |
確認できること |
体重 |
腹膜透析による除水量が適正か、ドライウェイトの設定に問題はないか、肥満または痩せの傾向がないか など |
血圧 |
体内にある水分量のバランスを維持できているか、心臓や血管の状態に問題はないか など |
尿量 |
腎機能による除水量を踏まえて透析液の交換回数・量・濃度などを設定できているか、脱水になっていないか など |
注液時間・排液時間 |
カテーテルの位置や縫合部分などの異常によって除水不良が起きていないか、透析液の濃度が適正か など |
体温 |
風邪や感染症のリスクがないか |
排液の状態 |
感染症のリスクがないか |
出口部 |
衛生管理やカテーテルのケアを正しく行えているか、感染症のリスクはないか など |
ドライウェイトとは、体内に余分な水分が溜っていない適正体重のことです。腹膜透析を実施する際は、ドライウェイトを設定して維持することが求められます。
体重・血圧・尿量などは、体内の水分量がバランスよく維持できているかを判断する情報となります。体重と血圧の上昇は、腹膜透析による除水が不十分または水分・塩分を摂りすぎていることが要因に考えられます。
また、発熱が見られる場合や、排液が白色または赤色で濁っている場合には、腹膜炎が疑われます。病院・訪問看護ステーションでは、速やかに主治医へ連絡して医療機関を受診するように患者へ伝えておくことが重要です。
患者によっては訪問看護師によるサポートが重要
記録ノートを用いた腹膜透析の管理について、訪問看護師によるサポートやケアが必要な患者もいます。高齢者や目・手先が不自由な患者の場合には、自身で体重や血圧などを想定して記録ノートに記入することが難しいケースがあります。
訪問看護を受けながら腹膜透析を行う患者においては、訪問看護師が身体状態や透析状況について観察・記録を行うことが重要です。
また、患者の主治医・病院の看護師と連携して記録ノートの内容を共有したり、食事・飲水の制限やケアの方法について指示を仰いだりできる体制を構築することも求められます。
病院と訪問看護ステーションの情報共有を円滑に行うには、医療連携に役立つアプリケーションを活用することが有効です。
▼腹膜透析患者の訪問看護については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では、腹膜透析の記録ノートについて以下の内容を解説しました。
- 腹膜透析の記録ノートを利用する目的
- 記録ノートの書き方
- 記録ノートの内容から確認できること
- 訪問看護師によるサポートについて
腹膜透析を行う際には、患者のドライウェイトを維持することが重要となります。飲水量や透析による除水量、尿量などは体の中にある水分量のバランスに影響するため、毎日測定して記録ノートへ記入することが必要です。
また、患者自身による測定・記入が難しい場合には、訪問看護師によるサポートとケアを行うことが求められます。患者の身体状態と透析状況を記録して主治医へ共有することで、異常の早期発見や透析処方の見直しなどにつなげられます。
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