腹膜透析における出口部ケアはなぜ重要? ケアの方法と注意点とは
腹膜透析では、透析液を腹腔内に注入・排出するためにカテーテルを挿入する手術が行われます。カテーテル出口部を作製したあとは、周囲を清潔に保つためのケアを行うことが重要です。
病院・訪問看護ステーションにおいては、カテーテル出口部のケアについて患者と家族に指導を行うとともに、日常的な経過観察によって異常の早期発見につなげることが求められます。
この記事では、腹膜透析でカテーテル出口部のケアを行う重要性やケアの方法、注意点について解説します。
▼腹膜透析の準備についてはこちらの記事をご確認ください。
目次[非表示]
- 1.腹膜透析でカテーテル出口部のケアを行う重要性
- 2.カテーテル出口部のケア方法
- 3.カテーテル出口部のケアを行う際の注意点
- 3.1.➀衛生管理を徹底する
- 3.2.②カテーテルの扱いに気をつける
- 3.3.③出口部周辺の観察を行う
- 4.まとめ
腹膜透析でカテーテル出口部のケアを行う重要性
カテーテルは、体内の腹腔内と体外をつなぐ役割があり、出口部を清潔に保つことは感染症を防ぐうえで重要となります。
カテーテル出口部を経由して細菌が体内に入り込むと、以下の感染症を引き起こす可能性があります。
▼カテーテル出口部における感染症
感染症 |
概要 |
出口部感染 |
出口部に細菌が入り込み炎症が起こる |
トンネル感染 |
出口部の感染が皮下トンネルまで広がる |
出口部感染やトンネル感染が起こると、赤み・腫れ・膿などの症状が現れることがあります。感染が皮下トンネルまで広がると、腹膜炎の原因になる可能性もあるため、予防と初期段階での治療が必要です。
なお、出口部感染やトンネル感染が起きた場合には、抗菌薬の内服によって治療を行います。ただし、経過によって治癒が見られない場合には、出口部の変更手術が必要になるケースもあります。
カテーテル出口部のケア方法
腹膜透析を受ける患者には、日ごろから正しい方法でカテーテル出口部のケアを行うように指導する必要があります。訪問看護師がサポートを行う際にも、主治医の指示に基づいたケアを行うことが重要です。
シャワーによる洗浄
カテーテル出口部の洗浄が可能な場合には、シャワーによる洗浄を行います。シャワーによる洗浄は、入浴時に浴室から出る直前に行うことがポイントです。
▼洗浄を行う手順
- 出口部を入浴パックで覆っている場合は剥がす
- タオルやガーゼで石鹸を泡立てて、出口部と周囲を優しく洗う
- シャワーを出口部の上下左右やチューブにかけて石鹸を十分に洗い流す
- 乾いた清潔なタオルで水分を拭き取る
浴槽に入る場合には、出口部にカバーを装着してお湯に接しないようにする“クローズド法”と、出口部を保護しない“オープン法”があります。
カテーテルの挿入手術を行って間もない時期や、公衆浴場を使用する場合には、出口部がお湯に接しないようにカバーを装着します。出口部が安定した時期に自宅で入浴する場合には、基本的にオープン法が可能とされていますが、感染症予防には一番風呂が推奨されます。
出口部を作製した時期や炎症の有無、自宅または公衆浴場の利用に応じて入浴方法を選択することが必要です。
消毒液を使用する
シャワーによる洗浄を実施したあとや、出口部を直接洗浄できない場合には、消毒液を使用してケアを行います。
▼消毒液によるケアの手順
- 手洗いと消毒を行う
- 出口部のガーゼやテープが貼付されている場合は剥がす
- 消毒液を減菌綿棒に含ませて出口部周囲の皮膚に円を描くようになぞる
また、主治医から抗菌用の塗り薬が処方されている場合には、消毒を行ったあとに出口部へ塗布します。
カテーテル出口部のケアを行う際の注意点
カテーテル出口部のケアを行う際には、実施環境やカテーテルの取り扱いに気をつけるとともに、出口部の状態を記録して継続的に観察することが必要です。
➀衛生管理を徹底する
出口部感染やトンネル感染を予防するには、衛生管理を行うことが重要です。
▼衛生管理のポイント
- 浴室や部屋の掃除を行い、清潔な場所で出口部のケアを実施する
- 清潔な下着・衣服を着用する
- ケアの前に手指を十分に洗浄する
- 出口部周辺に汗・汚れがある場合には、シャワーや濡れタオルで拭き取る
- ケアを行う際にはマスクを着用する
また、カテーテル出口部のケアだけでなく、透析液のバッグ交換で器具に触れる場合にも、清潔な環境で行うことが欠かせません。
②カテーテルの扱いに気をつける
シャワーによる洗浄や消毒などを行う際には、カテーテルの扱いに気をつける必要があります。
▼カテーテルの正しい扱い方
- 強く引っ張ったり、折り曲げたりしない
- 入浴時に体を洗う際には、腰ひもやビニール袋などでカテーテルを束ねる
- カテーテルやチューブの近くでハサミを使用しない
出口部のケアを行ったあとにカテーテルを固定する際は、皮膚のシワを伸ばした状態で自然な方向にテープを貼ることがポイントです。
③出口部周辺の観察を行う
患者や家族が出口部周辺の観察を毎日行い、異常が見られる場合には主治医へ速やかに報告します。
▼出口部周辺の観察項目
観察項目 |
チェックするポイント |
出口部 |
|
皮下トンネル |
|
出口部の状態を観察する際は、記録ノートを作成して毎日記入することがポイントです。訪問看護師が患者のサポートを行う際には、出口部の状態について主治医と共有できる仕組みを整えておくことが重要です。
▼記録ノートについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では、腹膜透析の出口部ケアについて以下の内容を解説しました。
- カテーテル出口部のケアを行う重要性
- カテーテル出口部のケア方法
- カテーテル出口部のケアを行う際の注意点
腹膜透析でカテーテルを経由した感染症を予防するには、シャワーによる洗浄や消毒などによって出口部のケアを行い、清潔な状態に保つことが大切です。
患者や家族に正しいケアの方法を指導するとともに、出口部の状態を観察して、異常がある場合には速やかに主治医への報告を促すことが必要です。
また、訪問看護師によるサポートを行う際には、患者の状態について主治医との情報共有を円滑に行える体制づくりも求められます。
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