PDラストという在宅医療の選択肢。患者にとってのメリットと必要なケアとは
日本では、慢性腎不全に対する腎代替療法として“血液透析”が行われる割合が多くなっています。しかし、長期間にわたる透析や加齢などといったさまざまな要因によって、血液透析を続けることが困難になる場合があります。
透析療法の終末期においては、血液透析よりも生活上の制約が少なく柔軟性が高い腹膜透析を行う“PDラスト”という選択肢があります。
病院・訪問看護ステーションでは、患者の年齢や健康状態、性格などを踏まえたうえで、終末期における透析療法の選択肢を提案することが求められます。
この記事では、PDラストによる透析療法の考え方や期待できるメリット、在宅医療に移行する際のケアについて解説します。
▼高齢者における腹膜透析の現状についてはこちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『個別事項』
目次[非表示]
- 1.PDラストとは
- 2.患者がPDラストを選択するメリット
- 2.1.住み慣れた自宅で過ごせる
- 2.2.心血管系への負担を抑えられる
- 3.PDラストを選択する患者へのケア
- 4.まとめ
PDラストとは
PDラストとは、透析患者が最期に腹膜透析を選択する考え方です。日本で行われている透析療法では、血液透析と腹膜透析の2つの選択肢があり、透析患者のうち約9割以上が血液透析を受けています。
血液透析では、血液を循環させるバスキュラーアクセスの手術や、週3回・1回4時間程度の通院が必要になることから、さまざまな要因によって継続が困難になる場合があります。
▼血液透析の継続が困難になるケース
- 心血管系の合併症がある
- 血管不足でバスキュラーアクセスの作製が困難
- 高齢によって通院の負担が大きい など
また、透析患者数は2019年の時点で約34万人となっており、10年以上の透析歴を持つ患者の増加や高齢化の進行が見られている状況です。
▼慢性透析患者の年齢分布
画像引用元:厚生労働省『中央社会保険医療協議会 総会(第502回)議事次第』
このように長期の透析や加齢などによって血液透析が困難になった患者に対して、在宅医療で透析を続けられるPDラストを提案することがあります。
▼透析療法の初期段階で腹膜透析を第一に選択する“PDファースト”という考え方もあります。詳しくは、こちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『個別事項』『個別事項(その7)』『腎代替療法について』『中央社会保険医療協議会 総会(第502回)議事次第』
患者がPDラストを選択するメリット
PDラストは、生活の質(QOL:Quality of life)を維持しながら透析を続けられる在宅医療の手段として選択されています。患者にとってPDラストを選択するメリットには、以下が挙げられます。
住み慣れた自宅で過ごせる
腹膜透析では、自宅で透析液のバッグ交換を行うことが可能です。
週3回・1回4時間程度の通院が必要になる血液透析と比べて日常生活の制約が少なくなることから、行動の自由度が高くなります。
病院ではなく住み慣れた自宅で過ごせることは、生活の質を維持・確保するうえで大きなメリットと考えられます。また、日常的な通院が不要になると、患者自身や送り迎えをする家族の負担も低減できるようになります。
出典:厚生労働省『個別事項』
心血管系への負担を抑えられる
心血管系への負担を抑えられることも、PDラストを選択するメリットの一つです。
腹膜透析では、体内の腹腔内に透析液を注入して、一定時間貯留させることによって余分な水分・塩分や老廃物を取り除きます。
▼腹膜透析のイメージ
画像引用元:厚生労働省『個別事項』
血管にバスキュラーアクセスを設置して血液を循環させる血液透析と比較して、心血管系の負担を抑えられます。心血管の合併症があり血液透析が困難な患者や、バスキュラーアクセスの作製が困難な患者の場合にも、腹膜透析が検討されます。
出典:厚生労働省『個別事項』
PDラストを選択する患者へのケア
PDラストを選択する患者のなかには、高齢や身体の状態によって自身で腹膜透析の管理を行うことが難しい場合があります。病院・訪問看護ステーションでは、安心して在宅での腹膜透析を受けられるようにケアを行うことが重要です。
▼訪問看護師によるケアの内容
ケア |
対応内容 |
衛生管理 |
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観察・検査 |
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メンタルケア |
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また、訪問看護を行う際には、主治医や病院の看護師、訪問看護師が患者の情報を共有できる体制を整えておくことがポイントです。ケアの方法について主治医の助言を得たり、体調の変化を速やかに報告したりすることにより、患者へのきめ細かなフォローにつなげられます。
▼腹膜透析患者への訪問看護については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では、PDラストについて以下の内容を解説しました。
- PDラストの考え方
- 患者がPDラストを選択するメリット
- PDラストを選択する患者へのケア
血液透析が困難になった患者や通院の負担が大きい高齢者などは、在宅で腹膜透析を行うPDラストを提案することがあります。腹膜透析は血液透析と比べて生活上の制約が少なく、身体的な負担を抑えやすいことから、透析療法の終末期における手段の一つとして選択されています。
病院・訪問看護ステーションでは、PDラストを希望する患者が安心して腹膜透析を受けられるように、必要に応じて訪問看護によるケアを実施することが求められます。訪問看護を実施する際には、主治医と円滑な情報共有を行える体制を整備することもポイントの一つです。
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