腹膜透析にかかる費用とは。患者の自己負担額を軽減する公的制度
腹膜透析には、医療機関の受診や医療品の準備などに費用がかかりますが、医療保険の給付と公的制度によって自己負担額は軽減されます。
腹膜透析を受ける患者や家族のなかには、毎月発生する医療費の負担について不安を持つ方もいるため、費用の目安と公的制度について分かりやすく説明しておくことが求められます。
この記事では、腹膜透析にかかる一般的な費用や患者の自己負担額を軽減する制度、事前に共有しておきたい事項について解説します。
目次[非表示]
- 1.腹膜透析にかかる一般的な費用
- 2.腹膜透析患者の自己負担額を軽減する公的制度
- 2.1.➀特定疾病にかかる高額療養費の特例
- 2.2.②自立支援医療制度(更生医療・育成医療)
- 2.3.③心身障がい者医療費助成制度
- 3.腹膜透析の費用に関して共有しておく内容
- 3.1.自己負担額の軽減対象となる費用
- 3.2.訪問看護の実施回数制限
- 4.まとめ
腹膜透析にかかる一般的な費用
腹膜透析にかかる医療費は、1ヶ月当たり約30~50万円程度(※1)となり、年間では約360~600万円かかるとされています。
健康保険(公的医療保険)の利用によって自己負担額は1~3割(※2)に軽減されますが、腹膜透析の医療費は高額になることから患者への負担は大きくなると考えられます。
▼健康保険(公的医療保険)による自己負担の割合
年齢層 |
一般・低所得者 |
現役並み所得者 |
75歳以上 |
1割 |
3割 |
70~75歳未満 |
2割 |
|
6~70歳未満 |
3割 |
|
6歳まで |
2割 |
※厚生労働省『医療費の自己負担』を基に作成
国や地方自治体では、基本的な医療保険の給付に加えて腹膜透析患者の自己負担額を軽減する公的制度が運用されています。
※1…病院・クリニックによって費用は変動します。
※2…年齢や所得によって割合が異なります。
出典:厚生労働省『医療費の自己負担』
腹膜透析患者の自己負担額を軽減する公的制度
国や地方自治体が運用する公的制度を利用することで、腹膜透析による自己負担額を1ヶ月当たり約1~2万円まで軽減できるとされています。
➀特定疾病にかかる高額療養費の特例
医療保険の高額療養費制度では、高額な治療を長期にわたって必要とする特定疾病を持つ患者について、医療費の自己負担額を引き下げる特例が設けられています。
腹膜透析を含む慢性腎不全の人工透析は、特定疾病の一つに指定されており、1ヶ月における自己負担限度額は1万円(※)となります。限度額を超える分については、高額療養費として医療保険による現物給付が行われる仕組みです。
※70歳未満の上位所得者の場合は2万円
出典:厚生労働省『高額療養費制度について』
②自立支援医療制度(更生医療・育成医療)
自立支援医療制度は、心身の障がいを除去または軽減するために要した医療費の自己負担額を軽減する医療制度です。対象者は3つに区分されており、腹膜透析患者においては“更生医療”あるいは“育成医療”に該当します。
▼更生医療・育成医療の対象者
区分 |
対象者 |
更生医療 |
身体障害者福祉法第4条に規定する18歳以上の身体障がい者 |
育成医療 |
児童福祉法第4条第2項に規定する身体障がいを持つ18歳未満の児童 |
更生医療・育成医療では、腎臓機能の障がいを除去または軽減する手術によって確実に効果が期待できる患者に対して、必要な自立支援医療費が支給されます。1ヶ月当たりの自己負担上限額は、患者の所得に応じて段階的に設定されています。
▼更生医療・育成医療における自己負担上限額(月額)
所得区分
(医療保険の世帯単位)
|
更生医療 |
育成医療 |
一定所得以上 |
対象外 |
対象外 |
中間所得2 |
1割または高額療養費の自己負担限度額 |
10,000円 |
中間所得1 |
5,000円 |
|
低所得2 |
5,000円 |
|
低所得1 |
2,500円 |
※厚生労働省『自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み』を基に作成
詳しい助成内容や条件については、都道府県・市区町村にお問い合わせください。
出典:厚生労働省『自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み』『自立支援医療制度の概要』『自立支援医療(更生医療)の概要』『自立支援医療(育成医療)の概要』
③心身障がい者医療費助成制度
心身障がい者医療費助成制度は、心身に重度の障がいを持つ人が支払った医療費の自己負担額を都道府県・市区町村が助成する制度です。
腹膜透析患者においては、身体障がい者手帳1級または2級を持つ方が対象とされるケースが一般的です。制度の名称や対象者の条件、助成内容などは都道府県・市区町村によって異なるため、詳しくはお問い合わせください。
腹膜透析の費用に関して共有しておく内容
腹膜透析を受ける患者に対して、軽減対象となる費用や訪問看護を行う場合の回数制限について共有しておくことが重要です。
自己負担額の軽減対象となる費用
健康保険や各種助成制度によって自己負担額が軽減されるのは、保険診療でカバーされる費用のみが対象となります。
▼腹膜透析で助成対象となる費用の例
- 公的医療保険の対象となる診療・検査
- 医薬品の処方
- 腹膜透析に必要な医療機器
- 訪問看護費 など
公的医療保険が適用されないサービスの利用や備品の購入費、入院時の食費などについては、基本的に助成対象外とされています。
訪問看護の実施回数制限
腹膜透析患者は、公的医療保険の適用(※)によって訪問看護を受けられます。
公的医療保険の給付対象となる訪問看護には、原則週3日以内の回数制限が設けられていますが、腹膜透析患者においては回数の制限なく実施することが可能です。
訪問看護の回数を追加する場合でも、医療費の自己負担額を軽減する公的制度の対象となることから、患者の自己負担額は少なくなります。場合によっては0円になるケースもあると考えられます。
▼訪問看護に関する医療保険の取り扱いや回数制限については、こちらの記事をご確認ください。
※患者の年齢や身体の状態によっては介護保険が適用になる場合があります。
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
まとめ
この記事では、腹膜透析の費用について以下の内容を解説しました。
- 腹膜透析にかかる一般的な費用
- 腹膜透析患者の自己負担額を軽減する公的制度
- 腹膜透析の費用に関して共有しておく内容
腹膜透析には、1ヶ月当たり約30~50万円の高額な医療費がかかるため、公的医療保険の給付だけでは患者の負担が大きくなりやすいと考えられます。
患者の金銭的な負担を軽減するには、国や地方自治体が運用する医療費の軽減制度を利用することが重要です。軽減制度を利用することで、1ヶ月の自己負担額は1~2万円程度に軽減できるとされています。
ただし、制度によって対象者の条件や助成内容などが異なるため、事前に確認して患者への情報共有を行うことが重要です。また、病院・訪問看護ステーションでは、腹膜透析による医療費や訪問看護の指示書などを円滑に共有できる体制を整えることも求められます。
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