腹膜透析患者の入浴方法とは。出口部の洗い方と注意点
腹膜透析では、腹腔内にカテーテルを挿入する手術を実施して自宅で透析液の交換を行います。カテーテルの出口部は、体内と体外につなぐ役割があるため、細菌の感染経路となってしまい出口部の炎症や腹膜炎などにつながる可能性があります。
このような感染のトラブルを防ぐには、出口部の状態に応じて入浴またはシャワーによる洗浄を行うことが大切です。
病院・訪問看護ステーションでは、患者に合わせた適切な入浴方法について指導を行い、感染症を防ぐためのケアを行うことが求められます。
この記事では、腹膜透析患者の入浴方法と出口部の正しい洗い方、入浴する際の注意点について解説します。
出典:厚生労働省『個別事項(その7)』
目次[非表示]
- 1.腹膜透析患者の入浴方法
- 2.出口部の正しい洗い方
- 3.腹膜透析患者が入浴する際の注意点
- 3.1.①浴室環境を清潔に保つ
- 3.2.②公衆浴場の利用時はクローズド法を選択する
- 3.3.③入浴後には出口部のケアを行う
- 4.まとめ
腹膜透析患者の入浴方法
腹膜透析患者の入浴方法には、カテーテルの出口部を保護する“クローズド法”と、保護しない“オープン法”があります。なお、以下に挙げる入浴とは浴槽に浸かることを指しており、シャワーのみの場合とは区別しています。
クローズド法
クローズド法による入浴方法には、“カバーシャワー浴”と“カバー入浴”があります。カテーテルの出口部を覆うための入浴用のカバー材を貼り付けて、お湯が出口部に接触しないように保護することで、感染症を予防できます。
▼クローズド法を選択するケース
- 出口部を作製して3~4週間以内(※)の期間
- 出口部の感染症が疑われる場合 など
▼入浴カバーの使用方法
- 接続チューブのキャップや留め具が閉まっていることを確認する
- 入浴カバーに接続チューブの先端を入れる
- カバーを回しながら接続チューブとカテーテルを中に入れる
- 皮膚のシワを伸ばして出口部が中心となるように位置を確認する
- 入浴カバー内の空気を抜きながら皮膚に貼り付ける
▼クローズド法による入浴方法
- 出口部に入浴カバーを貼り付ける
- 入浴する場合は、頭・体をよく洗ってから浴槽に浸かる
- シャワー入浴のみの場合は、頭・体を洗う
- 浴室から出る直前に入浴カバーを外してシャワーによる洗浄を行う
シャワーで直接出口部を洗えない場合には、浴室から出る際にお湯を含ませたタオルで出口部周辺を拭き取ります。
※患者の状態によって異なります。
オープン法
オープン法による入浴方法には、“オープンシャワー浴”と“オープン入浴”があります。出口部をカバー材で保護しないため、感染症の予防には十分に注意することが重要です。
▼オープン法を採用するケース
- 作製した出口部が安定している時期
- カテーテル挿入術後の傷が完全に治癒している
- 出口部の状態が正常
▼オープン法の入浴方法
- カテーテルと接続チューブに異常がないか確認する
- カテーテルが引っ張られないように、腰紐を巻いたりゴムでまとめたりする
- 必要に応じてチューブの先端をビニール袋に入れて保護する
- 入浴する場合は、頭・体をよく洗ってから浴槽に浸かる
- 浴室から出る直前にシャワーで出口部を洗浄する
オープン法でシャワーまたは入浴を行う際には、カテーテルが引っ張られないようにしっかり固定しておく必要があります。また、浴槽に浸かる場合には、感染症を予防するために一番風呂が望まれます。
出口部の正しい洗い方
出口部を洗うことが可能な患者の場合には、クローズド法とオープン法のいずれにおいても浴室から出る直前にシャワーによる洗浄を行います。
▼出口部の洗い方
- 入浴カバーを使用している場合は剥がす
- 石鹸を泡立てて、タオル・ガーゼ・指の腹などで出口部と周囲を優しく洗う
- シャワーを出口部の上下左右やチューブにかけて石鹸を十分に洗い流す
- 乾いた清潔なタオルで水分を拭き取る
石鹸で出口部周辺を洗う際は、皮膚をこすらずに丁寧に洗うことがポイントです。特に出口部は皮膚の表面がくぼみやすいため、石鹸やテープの糊などが残らないようにきれいに洗い流します。
腹膜透析患者が入浴する際の注意点
病院・訪問看護ステーションでは、出口部をよく観察して患者に合った入浴方法を選択するとともに、以下の注意点について情報提供と指導を行うことが重要です。
①浴室環境を清潔に保つ
入浴による感染症を予防するには、浴室環境を清潔に保つことが重要です。
▼浴室環境を清潔に保つポイント
- 浴槽に浸かる際には、浴槽を十分に洗浄する
- こまめに排水溝を掃除する
- 浴室の使用後は細菌が繁殖しないように乾燥させる など
病院・訪問看護ステーションでは、患者と家族に浴槽の洗浄や日ごろの掃除について指導を行うことが求められます。また、訪問看護によるサポートを行う際には、自宅の浴室環境についても観察することが必要です。
②公衆浴場の利用時はクローズド法を選択する
不特定多数の人が入浴する公衆浴場や温泉施設などは、自宅と比べて細菌による感染症のリスクが高くなると考えられます。
感染を予防するには、出口部を保護するクローズド法による入浴を行うことが望ましいといえます。公衆浴場だけでなく、プールや海に入るときも同様です。
また、クローズド法での入浴が終わったあとには、必ず水道水で出口部の洗浄と消毒を行うことが必要といえます。
③入浴後には出口部のケアを行う
入浴後は、出口部のケアを徹底することも重要です。
▼出口部のケアを行う手順
- 手指を十分に洗浄する
- 水分が残っている場合は、清潔なタオルで拭き取る
- 滅菌綿棒に消毒液を含ませて円を描くように出口部の周りをなぞる
- 消毒した部分には触れず、出口部をガーゼで保護する
また、出口部周辺の状態によっては、抗菌用の塗り薬やかぶれを防ぐための保湿剤を処方することも検討します。
▼出口部のケアについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
まとめ
この記事では、腹膜透析患者の入浴について以下の内容を解説しました。
- 腹膜透析患者の入浴方法
- 出口部の正しい洗い方
- 腹膜透析患者が入浴する際の注意点
腹膜透析患者の入浴については、出口部を作製した時期や状態を踏まえて、クローズド法またはオープン法のいずれかを選択します。出口部が安定しており正常な状態の場合には、オープン法によるシャワーや入浴が可能ですが、感染症の対策については特に気を配る必要があります。
病院・訪問看護ステーションでは、患者と家族に対して入浴方法や感染症対策の指導を行うとともに、出口部の状態について観察することが重要です。また、訪問看護を実施する際には、病院の主治医・看護師と患者の状態について情報共有できる体制を整えておくことも欠かせません。
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