腹膜透析患者の訪問看護で行うこと。患者に寄り添ったケアを実現するには
腹膜透析は、腎機能の動きが低下した際に、人工的に機能を補う透析治療の一種です。同じく人工透析治療に含まれる血液透析とは異なり、患者の自宅や勤務先などで行えることから、日常生活の制約が少ない利点があります。
しかし、高齢者や目・手先が不自由な患者の場合、自身で腹膜透析の管理を行うことが難しいケースがあります。そのような場合には、家族や訪問看護師によるサポートが必要になります。
病院や訪問看護ステーションの担当者のなかには、「スムーズな処置を行うために腹膜透析患者に対して何を行えばよいのか」「患者に寄り添ったケアを行うにはどのような対応が必要か」など気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、腹膜透析患者に対して訪問看護師が行うことやケアのポイントについて解説します。
出典:厚生労働省『個別事項(その7:その他の論点)』
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目次[非表示]
- 1.腹膜透析患者の訪問看護で行うこと
- 2.患者に寄り添ったケアを行うポイント
- 2.1.①清潔な環境を保つ
- 2.2.②患者の状態を主治医と共有する
- 2.3.③服薬や治療スケジュールを把握する
- 3.まとめ
腹膜透析患者の訪問看護で行うこと
腹膜透析を受ける患者に対して訪問看護を行う際は、安全かつ清潔な環境で透析が行えるように設備の管理やサポートを行うことが重要です。
また、腹膜透析は長期的に行うケースもあるため、訪問看護師と医師間の連携も欠かせません。ここからは、腹膜透析の導入前・導入初期・継続期において訪問看護師が行うことを解説します。
腹膜透析の導入前
腹膜透析の導入前は、患者の健康状態や生活環境などを確認して、安全かつ清潔にケアを行えるかどうかを確認します。
▼訪問看護師が行うこと
- 患者の生活環境や性格、腎機能の程度などを把握する
- 腹膜透析に関する不安や疑問などをヒアリングする
- 家族がいる場合、家族にも腹膜透析の方法を理解してもらう
- 腹膜透析に必要な器材・物品が揃っているか確認する
- 必要に応じてAPD装置の初期設定を行う など
腹膜透析では、腹腔内を経由して透析液の出し入れを行う方法について手動と自動の2つの方式があります。手動の場合、透析液が入ったバッグを訪問看護師が交換する必要があります。
自動の場合は、APD装置を設定・起動すると自動で透析液が交換されますが、患者自身でAPD装置の操作が難しい場合には訪問看護師が初期設定を行います。
出典:厚生労働省『個別事項(その7:その他の論点)』
▼腹膜透析の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
腹膜透析の導入初期
腹膜透析の導入初期においては、患者または家族によるセルフケアのアドバイスや衛生管理を行って安心して継続できるようにサポートを行います。
▼訪問看護師が行うこと
- 腹膜透析による痛みや体調不良などの問題がないか確認する
- 腹膜透析に用いる器材の設置場所・衛生状況を確認する
- 腹膜透析を行う際のセルフケアの方法をアドバイスする など
腹膜透析によって体調や尿量などにどのような変化があるかを確認します。バッグの交換回数や透析液の容量については、医師に相談して判断を仰ぎます。
また、安全かつ清潔な環境できちんと腹膜透析を行えているか、器材の設置・保管場所や衛生状況を確認することも重要です。
透析液のバッグ交換やカテーテルのケアなどを清潔に行えるように、部屋の衛生環境を保つとともに、患者または家族へセルフケアの方法をアドバイスします。
腹膜透析の継続期
継続期には、環境面の衛生管理を行うとともに、患者の健康状態を確認したうえで必要に応じて医師との連携を行います。
▼訪問看護師が行うこと
- 体重・血圧の測定と記録を行う
- 排液の色(にごりの有無)を確認する
- チューブの接続部やキャップに破損がないか確認する
- カテーテルの出口部分に炎症がないか観察する
- 透析液や物品の在庫数を確認する など
体重・血圧の変化は、尿量や排便、体内にある水分量の状態などを把握する目安の一つとなります。飲水量や食事の方法、透析液の容量などについて見直す必要性も考えられるため、医師への情報共有を行うことが重要です。
排液の色ににごりがある場合には、腹腔内に細菌が入ることによって引き起こされる腹膜炎が疑われるため、医療機関への連絡が必要となります。
また、腹膜炎やカテーテルの出口部分での炎症を予防するには、手指・物品の消毒によって清潔な状態を保つことが必要です。
患者に寄り添ったケアを行うポイント
腹膜透析患者への訪問看護を行う際には、部屋の環境や患者の健康状態を確認して、安心して腹膜透析を受けてもらえるようにケアを行うことがポイントです。また、患者それぞれに応じたケアを行うために、日頃から医師との連携を行うことが求められます。
①清潔な環境を保つ
腹膜透析を行う際は、清潔な環境を保つことが重要です。
透析液のバッグやチューブ、キャップなどが汚染されると、腹膜炎の原因になったり、カテーテルの出口部分に炎症が起きたりする可能性があります。
訪問看護を行う際は、腹膜透析を行う環境や使用する器材・物品などを清潔に保つための対策が必要です。
▼清潔な環境を保つためのポイント
- 部屋の掃除をしっかり行い、窓やドアは閉めておく
- ペットがいる場合は、ペットが出入りしない部屋で腹膜透析を行う
- 透析液のバッグ交換を行う際は、手指の洗浄・消毒とマスクの着用を行う
- 医師の指示に沿ってカテーテル出口部分の洗浄や消毒を行う など
②患者の状態を主治医と共有する
腹膜透析を安心して受けてもらうには、主治医と訪問看護師が円滑に連携できる仕組みを整備することがポイントです。主治医に患者の状態をきめ細かに伝えることで、患者に合ったケアの指示を受けられます。
▼主治医に共有する主な情報
- 腹膜透析の時間
- 食事の状況
- 体重
- 血圧
- 尿量
- 排液の状態
- カテーテル出口部分の状態
- 発熱や下痢、便秘などの体調の変化 など
患者のなかには、主治医の指示をうまく訪問看護師に伝えられない人もいます。主治医と訪問看護師が情報共有を行えるツールを活用すれば、健康状態やケアについて的確な意思疎通ができるようになります。
③服薬や治療スケジュールを把握する
主治医が判断した腹膜透析の方法に沿って患者のケアを行うために、訪問看護師が服薬や治療のスケジュールについて把握しておくことも欠かせません。
患者のなかには、ほかの医療機関で処方された薬を服用している場合があるほか、腹膜透析にあたって食事の内容や血圧の状態に応じた内服薬が処方されるケースもあります。訪問看護師は、患者の服薬状況を把握して定められた間隔で服用できるようにサポートすることが必要です。
また、腹膜透析に使用する透析液や器材などは、患者の自宅に配送されることが一般的です。治療のスケジュールを把握しておくことで、在庫の不足を防げます。
▼腹膜透析の注意点についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では、腹膜透析患者への訪問介護について以下の内容を解説しました。
- 腹膜透析を行う患者に訪問看護師が行うこと
- 患者に寄り添ったケアを行うポイント
腹膜透析患者へのサポートを訪問看護師が行う場合には、安全かつ清潔な環境を整えるとともに、患者の健康状態を観察・記録して、必要に応じて主治医との連携を行うことが重要となります。
また、主治医と訪問看護師が円滑に情報共有を行うためには、アプリケーションを活用することが有効です。
『kaleido TOUCH(カレイドタッチ)』は、病院と訪問看護ステーションにおける情報共有をサポートするアプリケーションです。訪問看護師が確認した患者の情報を主治医へタイムリーに共有できるため、状況に応じたきめ細かなケアと問題の早期発見を行えます。
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