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腹膜透析を行える期間はどれくらい? 継続的な治療を受ける患者への処置

腹膜透析は、体の中にある腹膜を利用して余分な水分・塩分や老廃物を取り除く透析方法です。慢性的な腎機能の低下を人工的に補うことを目的として行われます。

ただし、長期間にわたる腹膜透析は腹膜の劣化につながるおそれがあるほか、腹膜透析の期間・回数は、合併症のリスクや患者の予後にも関わります。

病院・訪問看護ステーションでは、患者に対して腹膜透析に関する十分な情報提供を行うとともに、腎機能や年齢などを踏まえた計画的な実施が求められます。

この記事では、長期間にわたる腹膜透析のリスクや腹膜透析を行える期間、 継続的な治療を受ける患者への処置について解説します。

出典:厚生労働省『中央社会保険医療協議会 総会(第502回)議事次第


目次[非表示]

  1. 1.長期間にわたる腹膜透析のリスク
  2. 2.腹膜透析を行える期間
  3. 3.腹膜透析を受ける患者への処置
    1. 3.1.➀衛生管理の指導を行う
    2. 3.2.②定期的に腹膜機能の検査を行う
    3. 3.3.③ほかの腎代替療法を検討する
  4. 4.まとめ


長期間にわたる腹膜透析のリスク

長期間にわたって腹膜透析を行うと、“被嚢性腹膜硬化症(以下、EPS)”という合併症を引き起こす可能性があります。

EPSとは、長期間の腹膜透析や腹膜炎を繰り返すことによって腹膜劣化(肥厚)が起こり、腸管周囲の腹膜が広範囲に癒着する合併症です。発症すると嘔吐や腹痛、便秘などの腸閉塞症状が見られるケースがあります。

長期間の腹膜透析や腹膜炎の罹患によって腹膜劣化の進行が疑われる場合には、EPSのリスクを考慮して腹膜透析の中止を検討することが求められます。

なお、腹膜透析で起こる可能性がある合併症については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。

  腹膜透析における注意点とは。合併症や抑うつ状態の予防へ向けて 腹膜透析は体への負担が少ないほか、自宅で透析液の交換を行えるため、患者の健康状態や生活スタイルに合わせて治療法を選択できます。腹膜透析を行うリスクと注意点について理解を深めておくことが重要です。今回は、腹膜透析のリスクと腹膜透析患者のケアを行う際の注意点について解説します。 「カレイドタッチ」ブランドサイト



腹膜透析を行える期間

腹膜透析を行える期間は、使用する透析液によって変わると考えられています。

日本における腹膜透析では、これまで酸性透析液の使用が主流となっており、腹膜劣化によって長期間の治療を続けることが困難とされていました。

一方、現在では使用する透析液が改良されており、ブドウ糖分解物を減少させた“中性化透析液”が標準的に使用されています。

中性化透析液を用いた場合には、残腎機能を保ちやすいことから、酸性液を利用していたときと比べてより長く腹膜透析を行える可能性が示唆されています。



腹膜透析を受ける患者への処置

長期間の腹膜透析を受ける患者に対しては、腹膜の状態について観察と評価を行うとともに、状況に応じてほかの療法を検討する必要があります。


➀衛生管理の指導を行う

腹膜の劣化を防ぐには、衛生管理を行い腹膜炎を予防することが必要です。

腹膜炎とは、細菌が腹腔内に侵入することによって生じる合併症です。発症すると腹膜機能の低下やESPの進展などにつながるおそれがあるため、予防と早期治療を行うことが求められます。

腹膜透析によって起こる腹膜炎の感染経路は、大きく外因性と内因性の2つに分類されます。


▼腹膜透析による腹膜炎の主な感染経路

感染経路
具体例
外因性
カテーテル出口部やトンネル感染からの波及、バッグ交換時における手指の接触などによって細菌が侵入するケース
内因性
臓器や血流中に存在する細菌が移行するケース(腸管感染や血行性感染など)


外因性の感染を防ぐには、手指の消毒やカテーテル出口部を清潔に保つためのケアなどによって衛生管理を行うことが重要です。内因性の感染については、腹膜炎の原因菌に応じて抗菌薬を投与する場合があります。

病院・訪問看護ステーションでは、患者や家族に対して衛生管理の方法を指導するとともに、腹膜炎を早期発見できるように排液の観察が求められます。


②定期的に腹膜機能の検査を行う

患者の腹膜機能を評価する検査を定期的に実施することも必要です。

腹膜透析を継続すると、腹膜機能は経時的に変化していきます。患者に合わせた透析液の貯留時間や交換回数、濃度、量などを決定するとともに、腹膜の劣化を早期発見できるように、腹膜機能の評価を行うことが求められます。

腹膜機能の検査で広く行われている方法は“腹膜平衡試験(PET)”となり、臨床研究による報告も数多くあります。


③ほかの腎代替療法を検討する

継続的な腹膜透析によって腹膜機能の低下やESPのリスクが見られる場合には、ほかの腎代替療法への移行を検討します。末期腎不全に対する腎代替療法には、腹膜透析を含めて以下の3つが挙げられます。


▼末期腎不全に対する腎代替療法


腹膜透析
血液透析
腎移植
生活の制約
やや多い
多い
ほとんどない
食事・飲水の制限
やや多い
多い
少ない
手術の内容
腹膜透析カテーテル挿入(中規模手術)
バスキュラーアクセス(小手術・局所麻酔)
腎移植術(大規模手術・全身麻酔)
通院回数
月に1~2回程度
週に3回
1年以降は月1回
感染の注意
やや必要
必要
重要

厚生労働省『個別事項(その7)』を基に作成


それぞれの療法で手術の内容や生活上の制約などが変わるため、患者と家族に対して腎代替療法の情報を十分に提供したうえで同意を得て決定することが重要です。


出典:厚生労働省『個別事項(その7)



まとめ

この記事では、腹膜透析の期間について以下の内容を解説しました。


  • 長期間の腹膜透析によるリスク
  • 腹膜透析を行える期間
  • 腹膜透析を受ける患者への処置


近年では、腹膜透析の透析液が中性化透析液に改良されており、酸性液を使用していたときと比べて長く腹膜透析を行えることが期待されています。ただし、長期間の腹膜透析や頻回の腹膜炎は、腹膜機能の低下につながるおそれがあります。

日々の観察と衛生管理を行うとともに、定期的に腹膜機能の検査を行い、患者の腹膜機能に応じて透析液の貯留時間や交換回数、量などを調整することが重要です。また、ほかの腎代替療法に関する十分な情報提供を行い、患者に合った透析療法を選択できるようにすることも必要といえます。

病院・訪問看護ステーションで患者の観察や衛生管理の指導などを行うには、医師と訪問看護師が円滑に情報共有を行える体制が求められます。

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