僻地医療に参加するメリット・デメリット。人材を確保する際のポイントとは
僻地とは、山間地や離島などの住民に対する医療の確保が困難な地域のことです。
医療施設がない無医地区(※1)・準無医地区(※2)では、行政機関によって僻地医療支援機構を中心とした病院・診療所が設置されており、医師の派遣やキャリア形成支援などが行われています。
一方、僻地医療に携わる人材は不足しており、現場の負担を招いたり、地域住民へ専門医療・在宅医療を十分に提供できていなかったりする課題も見られています。
僻地にある病院・診療所を運営している担当者のなかには「人材確保のために僻地医療に参加するやりがいや悩みを改めて理解したい」「働きやすい環境を整備して人材の採用につなげたい」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、僻地医療に参加するメリット・デメリットや人材を確保するためのポイントについて解説します。
なお、僻地医療の課題についてはこちらの記事で解説しています。
※1…原則として医療機関がない地域。地区の中心的な場所からおおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住しており、かつ容易に医療機関を利用することができない地区を指す。
※2…都道府県知事が医療の確保が必要と判断して厚生労働大臣が適当と認めた地区。
出典:厚生労働省『へき地の医療について』
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僻地医療に参加するメリット・デメリット
都市部と比べて医療資源が限られる僻地医療に参加することは、社会と地域への貢献につながる一方、日常生活やキャリア形成などにさまざまな問題を抱えているケースもあります。
メリット
僻地医療に参加するメリットには、主に以下が挙げられます。
▼メリット
- 都市部よりも待遇面で優遇される可能性がある
- 医師・看護師としての存在意義を感じやすい
- プライマリ・ケアのスキルを磨ける など
国や地方自治体では、僻地医療に参加する医師・看護師を確保することを目的としてさまざまな補助を行っており、都市部と比べて好条件の待遇が設定されやすくなります。特に医師不足の病院・診療所や専門医の場合には、待遇が優遇されやすく収入アップを図れる可能性が期待できます。
また、過疎地域・山岳地域では高齢者の独居や老老世帯が多く見られており、ケアをする家族が近くにいない場合も少なくありません。僻地において高齢者医療や在宅医療を提供することは地域住民にとって心強い存在となるため、医師・看護師としてのやりがいを感じやすいといえます。
さらに僻地医療では、一人の医師が基礎的な診療を総合的に対応するケースも多く、急性期から慢性期、終末期に至るまで患者に寄り添うプライマリ・ケアのスキルを学ぶことが可能です。
身近なかかりつけ医として患者との結びつきが生まれると、既往歴を踏まえた生活習慣のアドバイスをしたり、体調や病状の変化に気づいて医療方針を検討したり、きめ細かな医療を提供できるようになります。
デメリット
僻地医療に参加する医師・看護師がデメリットに感じやすい点には、以下が挙げられます。
▼デメリット
- 僻地での暮らしに順応する必要がある
- 一人の医師に対して幅広い対応が求められる
- 最新医療への学習機会が不足しやすい など
僻地医療では、公共交通機関や商業施設などが十分に整備されておらず車移動が中心となることから、生活に不便を感じやすくなります。住民同士の人間関係も密接になりやすいため、地域特有の文化や価値観、コミュニティに順応することも必要です。
また、医師が限られやすい僻地医療では、幅広い分野の医療知識が求められたり、一人で診療対応や基幹病院への転送手続きをしたり、業務範囲が広くなりやすいと考えられます。病院・診療所間のフォロー体制が整っていない施設では、精神的なプレッシャーや体力の負担を感じる人もいます。
さらに、公共交通機関を容易に利用できない地域の場合には、都市部で実施される学会や講習会などに参加しにくくなり、最新の医療を学ぶ機会が得られないという課題もあります。
なお、僻地医療の現状については、こちらの記事で解説しています。
僻地医療に携わる人材を確保するポイント
僻地にある病院・診療所において人材確保に取り組む際は、僻地医療に参加するメリット・デメリットを踏まえたうえで、採用活動や医療体制の改善に生かすことが重要です。
➀手厚い福利厚生を用意する
僻地医療の参加を促すために、医師・看護師に対して手厚い福利厚生を用意する方法があります。
都市部の医療施設に従事している医師・看護師のなかには、僻地への引越しが負担になったり、新たな地域での生活に不安を持ったりする人もいます。また、先進医療の学習やキャリアアップに関する機会を得られないことによる不満もあると考えられます。
福利厚生を用意して僻地での生活やキャリアアップをサポートすることにより、僻地医療に興味を持ってもらえる可能性が期待できます。
▼僻地医療の人材確保を図るための福利厚生
- 医師・看護師向けの宿舎を完備する
- 引越し費用を補助する
- 住宅手当を支給する
- 拠点病院や大学と連携して教育・実習プログラムを提供する など
②ICTを活用して医療連携の体制を整備する
ICTを活用して医療連携ができる体制を整備することも、人材確保において重要なポイントといえます。
病院・診療所間でフォローを行える体制を構築すると、医師同士で診療対応の相談をしたり、専門医療への転送や入院の手続きを円滑に行ったりできるようになり、業務負担の削減を図れます。
また、地域の訪問看護ステーションや介護施設と円滑に情報共有を行える仕組みをつくると、関係者への連絡業務を効率化できるほか、住民への質の高い医療サービスの提供を行えます。
その結果、働きやすさの向上や僻地医療に参加するやりがいの創出につながり、人材確保にもよい影響をもたらすと期待できます。
まとめ
この記事では、僻地医療について以下の内容を解説しました。
- 僻地医療に参加するメリット・デメリット
- 僻地医療に携わる人材を確保するポイント
僻地医療に参加すると、地域住民の心強い存在としてプライマリ・ケアを提供できるほか、患者一人ひとりに寄り添ったきめ細かなケアや在宅医療を行いやすくなり、社会と地域への貢献につながります。
一方で、医師不足による業務の負担や日常生活の不便さ、キャリア形成などについて不安を感じる人もいると考えられます。
僻地医療に携わる人材を確保するには、手厚い福利厚生を用意して生活面やキャリアアップをサポートするとともに、ICTを活用した医療連携の体制を構築して、働きやすい環境づくりと質の高い医療サービスの提供を行うことがポイントです。
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