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僻地医療の現状とは。医療体制を構築するポイント

僻地では、医療施設・医療機器といった資源や医師・看護師などの人材が限られやすいことから、地域住民に対して十分な受診機会を提供できていなかったり、医療現場の負担を招いたりするケースも少なくありません。

病院・訪問看護ステーションの担当者のなかには「僻地医療の現状はどうなっているのか」「現場の課題を解決するにはどのような施策が考えられるか」と調べている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、僻地医療の現状と現場での課題、僻地での医療体制を構築するポイントについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.僻地医療とは
  2. 2.僻地医療の現状
    1. 2.1.無医地区数の推移
    2. 2.2.僻地医療拠点病院と僻地診療所の施設数
    3. 2.3.主要3事業の実施状況
  3. 3.僻地医療の課題
  4. 4.僻地での医療体制を構築するポイント
    1. 4.1.➀遠隔医療を導入する
    2. 4.2.②拠点間や多職種で医療情報を共有する
  5. 5.まとめ


僻地医療とは

僻地医療とは、無医地区および準無医地区などで行われる医療のことです。厚生労働省が定める医療計画においては、以下のように定義されています。


▼僻地の定義

へき地とは、「無医地区」、「準無医地区(無医地区に準じる地区)」などのへき地保健医療対策を実施することが必要とされている地域

引用元:厚生労働省『へき地の医療について


無医地区は、原則として医療機関が存在しない地域を指します。地区の中心的な場所からおおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住しており、かつ容易に医療機関を利用できない地区が該当します。

準無医地区は、医療の確保が必要と都道府県が判断して、厚生労働大臣が適当と認めた地区が該当します。

なお、総合的な診察能力を持つ僻地医療の拠点として都道府県知事が指定した病院を“僻地医療拠点病院”、一定の設置基準に基づいて設置された基礎的な医療を提供する診療所を“僻地診療所”といいます。

出典:厚生労働省『へき地の医療について



僻地医療の現状

日本国内における無医地区数は減少傾向にあるものの、医療機関に求められる主要な事業については実施が一定数にとどまっています。


無医地区数の推移

厚生労働省が実施した『令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査』によると、無医地区は長期的に見て減少傾向にあることが報告されています。


▼無医地区数と人口の推移

無医地区数と人口の推移

画像引用元:厚生労働省『令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します



1984年には無医地区が1,276地区あったのに対して、2022年には557地区まで減少しています。無医地区が減少した背景には、人口の減少や都道府県による僻地診療所の開設などのさまざまな要因が考えられます。

出典:厚生労働省『令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します』『へき地の医療について


僻地医療拠点病院と僻地診療所の施設数

都道府県が指定した僻地医療拠点病院の数は、2021年4月1日の時点で341箇所となっています。


▼【分類別】僻地医療拠点病院の数

【分類別】僻地医療拠点病院の数


画像引用元:厚生労働省『へき地の医療について


僻地医療拠点病院では、病床数が400床未満の小~中規模の施設が多いほか、常勤の医師数は50人未満が多くなっています。施設の開設者については、公立公的医療機関が全体の70%以上を占めている状況です。

また、僻地診療所については1,108箇所設置されています。


▼【分類別】僻地診療所の数

【分類別】僻地診療所の数


画像引用元:厚生労働省『へき地の医療について


90%以上が無床診療所かつ公立公的医療機関となっており、常勤医師がいない施設も多く見られています。

出典:厚生労働省『へき地の医療について


主要3事業の実施状況

僻地医療拠点病院では、特に取り組みが必要な事業として以下の3つが挙げられており、“主要3事業”と呼ばれてます。また、主要3事業に“遠隔医療”を加えた4つが必須事業とされています。


▼主要3事業

  1. 僻地診療所への医師派遣
  2. 代診医派遣
  3. 巡回診療


2021年度に主要3事業を年間12回(月1回)以上実施した僻地医療拠点病院は合計で256箇所あり、全体の74.2%となっています。


▼僻地医療拠点病院における必須事業の実施状況


主要3事業
医師派遣
代診医派遣
巡回診療
遠隔医療
実施
256施設
(74.2%)
134施設
(38.8%)
55施設
(15.9%)
88施設
(25.5%)
115施設
(33.3%)
未実施
89施設
(25.8%)
211施設
(61.2%)
290施設
(84.1%)
257施設
(74.5%)
230施設
(66.7%)


主要3事業のいずれかを実施している施設は半数以上を超えていますが、代診医派遣や巡回診療については未実施の施設のほうが多い状況です。また、遠隔医療を年1回以上実施している施設は115箇所あり、全体の33.3%となっています。

出典:厚生労働省『へき地の医療提供体制について



僻地医療の課題

僻地医療では、主に以下の課題が顕在化していると考えられます。


▼僻地医療の課題

  • 医療拠点が不足している
  • 医療を担う人材が不足している
  • 僻地医療拠点病院と僻地診療所の連携ができていない


近年、無医地区数は減少傾向にありますが、2022年時点ではまだ557地区が存在しており、一部の地域住民に対して医療機関を受診する機会が確保されていない可能性があります。

また、僻地診療所では病床がなく、常勤医師が0~1人で運営している施設がほとんどです。僻地医療拠点病院による代診医派遣や巡回診療も十分に実施されていないことを踏まえると、僻地診療所での診療または在宅医療を望む住民に対する医療の確保も求められます。

僻地において持続可能な医療体制を構築するには、僻地医療拠点病院と僻地診療所が円滑に連携して医療資源を効率的に活用できる仕組みが必要です。

なお、僻地医療の課題についてはこちらの記事で解説しています。

  僻地医療の課題。持続可能な医療体制を構築するには 近隣に医療機関がない僻地においては、地域住民に対して十分な医療を提供するために、病院・診療所が行政機関と連携して効率的かつ持続的な医療体制を構築することが求められます。この記事では、僻地医療の課題と持続可能な医療体制を構築するためのポイントについて解説します。 「カレイドタッチ」ブランドサイト


出典:厚生労働省『へき地の医療について』『へき地の医療提供体制について



僻地での医療体制を構築するポイント

人材の効率的な活用によって僻地に暮らす住民へ充実した医療を提供するには、オンラインを活用した医療体制を整えることがポイントです。


➀遠隔医療を導入する

遠隔診療とは、ICTを活用して遠隔地にある拠点または患者の自宅をつないで、医師が診療を行うことです。“オンライン診療”と呼ばれることもあります。


▼遠隔医療の主な類型

類型
概要
D to P
医師と患者間で相談や定期処方薬の処方などを行う
D to P with D
患者が遠隔地にいる医師の診療を受ける際に、主治医が同席する
D to P with N
患者が遠隔地にいる医師の診療を受ける際に、看護師が同席する
D to D
医師と医師間で遠隔相談や遠隔画像診断、遠隔病理診断などを実施する


僻地医療拠点病院では遠隔医療が必須事業に含まれていますが、年1回の遠隔医療を実施した施設のうちオンライン診療を導入しているのは18箇所となり、全体のわずか5.2%にとどまっています。

オンライン診療を導入して、常勤医師がいない僻地診療所や患者が自宅に居ながら診療を実施できると、医師が不足している地域で基礎的な医療を確保できます。

なお、遠隔医療の実施にあたっては映像と音声をオンラインでやり取りできるスマートフォンのアプリケーションやSNS、専用のシステムを活用します。

出典:厚生労働省『へき地の医療について』『へき地の医療提供体制について


②拠点間や多職種で医療情報を共有する

僻地医療拠点病院による医師派遣や巡回診療などの支援を促進するには、情報共有を円滑化することが重要です。

僻地医療拠点病院と僻地診療所がオンラインで患者情報を共有できると、医師の派遣や入院患者の受け入れなどをスムーズに行えるほか、労務・請求業務を効率化することが可能です。

また、僻地にある病院と訪問看護ステーション、介護施設などの多職種と連携できるネットワークを構築すると、訪問看護の診療におけるサポートの充実と効率化を図れます。



まとめ

この記事では、僻地医療の現状について以下の内容を解説しました。


  • 僻地医療の概要
  • 僻地医療の現状と課題
  • 僻地医療の課題に対応するポイント


医療資源に限りがある僻地において持続的な医療を提供するには、病院・診療所の連携によって人材を効率的に活用することが求められます。

そのためには、オンラインで遠隔医療を行える仕組みと、拠点間で医療情報を共有できる体制を整備することがポイントです。

また、僻地にある病院・診療所と訪問看護ステーションや介護施設などの包括的なネットワークを構築できれば、入退院の手続き、訪問看護による在宅医療なども円滑に行えるようになり、医療の質向上につながると考えられます。

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