在宅緩和ケアのメリット・デメリット。患者と家族に寄り添った支援を行う方法
医療を必要とする患者が住み慣れた場所でケアを受けられるように、通院医療・入院医療に次ぐ新しい選択肢として在宅医療が推進されています。
慢性的な疾患がある人や通院が難しい人などで在宅医療を受けている患者のなかには、“在宅緩和ケア”を希望するケースもあります。
病院・訪問看護ステーションでは、在宅緩和ケアのメリット・デメリットを知り、患者本人とその家族の意思を踏まえた治療方針の提案や、自宅での療養について必要な支援を円滑に行うことが求められます。
この記事では、在宅緩和ケアのメリット・デメリットや、患者と家族に寄り添った支援を行う方法について解説します。
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在宅緩和ケアとは
在宅緩和ケアとは、病気を抱える患者とその家族に対して、心と体のつらさを和らげることを目的としたケアのことです。
医師や訪問看護師などが自宅に訪問して、療養中の診療と生活上の支援を行うことによって、住み慣れた場所で安心して生活を送れるようになり、患者本人と家族の意思を尊重した医療の提供につながります。
▼在宅緩和ケアを導入するケース
- 外来での通院が難しくなった
- 重い病気になり、治療を始めることになった
- 慢性的な病気により自宅で過ごす時間を増やしたいと希望があった など
自宅でのケアについては、患者と家族の意向や本人の状態を踏まえたうえで、必要な支援を選択・提供できるように医師体制を整備することが必要です。
基本的には主治医と訪問看護師が中心となりますが、必要に応じて作業療法士や薬剤師、ケアマネージャーなどのさまざまな専門職と連携してチームでの支援を行います。
出典:厚生労働省『緩和ケア』
在宅緩和ケアのメリット・デメリット
在宅緩和ケアは、患者とその家族の生活をよりよい方向に導くために実施されます。治療方針を検討する際は、患者と家族にメリット・デメリットを説明したうえで意向を確認することが大切です。
メリット
在宅緩和ケアには、患者にとって以下のメリットがあります。
▼患者にとってのメリット
- 生活の質(QOL:Quality of Life)を維持・向上できる
- 通院の負担を軽減できる など
患者が自宅で診療や処置などを受けられると、1日の時間を自分のペースで過ごすことが可能です。病院で入院するときのように食事や入浴の時間帯が決まっておらず、体調に応じて可能な範囲で自由に行動できるようになります。
また、住み慣れた場所で家族やペットと過ごしたり、家族が作ってくれた料理を食べたりできることは、心にもよい影響をもたらすと考えられます。このような精神的な安心は、生活の質向上に結びつきます。
さらに、医師や訪問看護師、作業療法士などが自宅に訪問して必要なケアを行うため、通院にかかる身体的な負担と時間を軽減できることもメリットです。家族による送迎も不要になり、仕事やほかのスケジュールとの調整がしやすくなります。
デメリット
在宅緩和ケアのデメリットには、以下が挙げられます。
▼患者や周囲の人にとってのデメリット
- 家族に負担がかかる可能性がある
- 使用できる医療機器や薬剤などに制限がある
- 医師・看護師が迅速に対応できない場合もある など
在宅緩和ケアでは、家族が身の回りの世話や介助を行ったりする役割を担う場合があり、負担につながる可能性があります。家族の意向や生活環境などを踏まえて、訪問看護師を含むチームで在宅医療を支えることが欠かせません。
また、病院で入院して生活する場合とは異なり、使用できる医療機器や薬剤などが制限されます。患者の病状や希望する医療の内容によっては、通院または入院での対応を検討するケースもあります。
そのほか、病院に入院していると状態が変化した際に迅速に処置を行えますが、在宅の場合には医師・看護師がすぐに対応できない場合も考えられます。そのため、「病院にいたほうが安心」と考える家族も少なくありません。
患者と家族に寄り添った在宅緩和ケアを行う方法
自分らしい生活を続けながら安心してケアを受けてもらうには、患者と家族との信頼関係を築くとともに、医療環境を整備することがポイントです。
➀患者と家族の希望に応じたケアを提案する
在宅緩和ケアを検討する際は、患者と家族の希望に応じてケアの方法を提案することが重要です。
患者が自宅に居ながら医療を受けられる在宅緩和ケアでは、家族による日常生活の支えが必要不可欠となります。しかし、家族のなかには「仕事や子育てをしながらサポートできるか不安」「病院にいたほうが質の高いケアを受けられるのではないか」と不安に感じる人もいます。
病院の医師・看護師は、患者とその家族の希望や悩みによく耳を傾けて、正しい情報提供を行ったり、緩和ケアの選択肢を提案したりすることがポイントです。
緩和ケアの実施方法には、在宅のほかに以下の2つがあります。
▼緩和ケアの実施方法
実施方法 |
概要 |
緩和ケア外来 |
患者が通院して緩和ケアの専門知識を持つ医師・看護師による診療を受ける方法 |
緩和ケア病棟 |
緩和ケアに対する専門知識を持つ医師・看護師や専門医が在籍している病棟に入院する方法 |
在宅緩和ケアに移行したあとに自宅での生活が難しい状況となった場合には、外来や入院による緩和ケアの実施を検討します。
②ICTを活用して他職種間の連携体制を整備する
質の高い在宅緩和ケアを提供するには、ICTを活用して他職種間で円滑に連携できる体制を整備することがポイントです。
▼在宅緩和ケアを支える専門職の例
- 医師
- 訪問看護師
- 作業療法士・理学療法士・言語聴覚士
- 薬剤師
- 栄養管理士
- 相談員、ケアマネージャー など
ICTを活用して他職種との円滑な情報共有を行える仕組みを構築できれば、専門職の担当者が登録した患者の情報を主治医がリアルタイムに把握して、状況に応じた的確な指示を出せるようになります。
また、病院の医師・看護師と他職種間で連絡を取り合うフローが削減されて、迅速な情報共有と業務の効率化につながると期待できます。
まとめ
この記事では、在宅緩和ケアについて以下の内容を解説しました。
- 在宅緩和ケアの概要
- 在宅緩和ケアのメリット・デメリット
- 患者と家族に寄り添った在宅緩和ケアを行う方法
在宅緩和ケアには、患者の自分らしい生活を守るとともに、療養生活を支える家族の不安を和らげることや通院の負担を軽減することが期待できます。
一方で、家族による日常生活のサポートが負担となったり、医師・看護師が常にいないことに不安を感じたりする人もいます。
患者と家族に寄り添った在宅緩和ケアを提供するには、希望・悩みを踏まえてほかの選択肢を提案することや、ICTを活用して他職種間の連携体制を整備することがポイントです。
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