在宅医療情報連携加算とは。算定要件と施設基準を解説
2024年度の診療報酬改定では、質の高い在宅医療体制を推進するために訪問診療・往診などに関する評価が見直されました。この一環として新設された加算の一つに、“在宅医療情報連携加算”が挙げられます。
病院や訪問看護ステーションの担当者のなかには、「在宅医療情報連携加算にはどのような算定要件があるのか」「どのようなシーンで診療情報を活用するのか」など気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、在宅医療情報連携加算の概要や算定要件、在宅医療における診療情報の活用シーンについて解説します。
■2024年度診療報酬改定について、こちらで詳しく紹介しています
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
目次[非表示]
- 1.在宅医療情報連携加算とは
- 2.在宅医療情報連携加算の算定要件
- 3.在宅医療情報連携加算の施設基準
- 4.在宅医療における診療情報の活用シーン
- 4.1.➀日常の療養支援
- 4.2.②入退院の支援
- 4.3.③急変時の対応・看取り
- 5.まとめ
在宅医療情報連携加算とは
在宅医療情報連携加算とは、2024年6月1日に施行される診療報酬改定で新設された加算の一つです。
画像引用元:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
医療機関がICTを活用して、在宅で療養する患者の診療情報をほかの医療機関へ共有したり、医療・ケアに関する情報を基に医師が計画的な医学管理を行ったりした場合に加算を取得できます。
在宅医療連携加算の算定要件を満たす場合には、診療報酬として100点が加算されます。
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
在宅医療情報連携加算の算定要件
在宅医療情報連携加算を算定するには、以下の要件を満たすとともに、医療機関の関係者がICTを用いて診療情報を記録する必要があります。
▼在宅医療情報連携加算の算定要件
- 患者の医療・ケアに関わる情報を取得・活用して計画的な医学管理を行う
- 診療情報を記録して医療関係職種で共有することについて患者の同意を得る
- 特定の診療情報を記録する
- 医療関係職種が当該情報を取得した場合に、同様に記録することを促すように努める
- 訪問診療を行う際に、過去90日以内に記録された患者の医療・ケアに関する情報をICT活用によって1つ以上取得する
- 患者の医療・ケアを行う際に関係職種から助言を求められた場合に適切に対応する
また、上記3で記録が必要な情報には以下が挙げられます。
▼ICTを用いて記録する情報
- 次回に実施する訪問診療の予定日
- 治療方針に関する変更の有無と概要
- 当該患者の医療・ケアを行う際の留意点(医師が必要と判断した場合)
- 人生の最終段階における医療・ケアおよび病状の急変時の治療方針に関する患者・家族の希望
■多種職連携の重要性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
在宅医療情報連携加算の施設基準
在宅医療情報連携加算を算定するには、医療機関の施設基準に関する要件を満たす必要があります。
▼在宅医療情報連携加算の施設基準
- 患者の診療情報をICTによって共有できる関係機関の数が5つ以上ある
- 地域においてICTを用いた診療情報の連携を希望する医療機関が現れた場合には、連携体制を構築する
- 厚生労働省が定める『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン』に対応している
- 連携体制を構築していることや、連携する医療機関の名称を見やすい場所に掲示してWebサイトに掲載する
診療情報を記録・共有する際に用いるシステムには、不正な利用や改ざん、破損などが起こらないように情報セキュリティマネジメントを行うことが求められます。
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0版』
在宅医療における診療情報の活用シーン
病院や訪問看護ステーションなどで患者の診療情報を共有できる体制を整備することで、在宅医療を効率的かつ正確に行えるようになり、より質の高い医療の提供につながると期待されます。
➀日常の療養支援
在宅医療において日常の療養支援を行う際に、医療・ケアに関する診療情報を活用できます。特に医療依存度の高い高齢者の場合は複数の医療・介護サービスを受けているケースがあるため、施設間での円滑な連携が求められます。
▼日常の療養支援に関する診療情報の活用例
- 訪問看護において午前中の健康状態から生じた変化を午後のケアに役立てる
- 患者の状態やケアの様子を写真・動画で記録して主治医の判断に役立てる
- 治療の経過や家族によるサポートの状況を踏まえて、ケアマネジャーを主体としたほかの関係機関との協働支援を行う など
医師や訪問介護員、ケアマネジャーなどと患者の診療情報を共有できる体制を整備することで、関係者に伝えたい情報を一度に伝達したり、情報を鮮明に伝えたりできるようになります。
出典:厚生労働省『医療介護情報共有システム導入時の参考になる手引き』
②入退院の支援
患者が入退院をする際には、病院と在宅医療をサポートする訪問看護または訪問介護などの施設間で情報共有を行う必要があります。
入退院の際に、患者に関する情報が記載された書類を手渡しまたは郵送で共有する場合、「週末をまたぐことで確認に時間を要する」「遠方にある施設に直接訪問するのに負担がかかる」などの問題があります。
医療機関でオンラインによる情報連携ができる体制を整備することで、入退院の経緯が明確になるほか、診療情報を一元管理して今後の治療方針やスケジュールなどを検討しやすくなります。
▼入退院の支援に関する診療情報の活用例
- 介護施設から病院へ入院する際に、入所していた患者の状態やケアの内容を確認したうえで医師による治療方法を検討する
- 病院側で作成した患者のアセスメントを訪問看護ステーションに共有して、ケアプランの策定に役立てる など
出典:厚生労働省『医療介護情報共有システム導入時の参考になる手引き』
③急変時の対応・看取り
在宅医療を受ける患者の状態が急変した際に、迅速な対応や看取りを行う際にも医療機関での情報連携が役立ちます。全国における救急搬送件数のうち、在宅や入所施設などで医療を受けている高齢者は多くの割合を占めています。
在宅医療を行う診療所や訪問看護ステーションが連携することで、緊急時の対応や看取りについてバックアップ体制を構築できます。また、救急の搬送または外来時に医師が患者の情報を速やかに参照できると、迅速な処置によって命を守ることにもつながります。
▼急変時の対応・看取りに関する診療情報の活用例
- 医師によって処方・病名・アレルギーなどの医療情報を登録して、救急搬送時にほかの医療機関が参照する
- ケアマネジャーが患者本人や家族から聴取した延命措置に関する情報を登録して、医師が意向に沿った処置や看取りを行う など
出典:厚生労働省『医療介護情報共有システム導入時の参考になる手引き』
まとめ
この記事では、在宅医療情報連携加算について以下の内容を解説しました。
- 在宅医療情報連携加算の概要
- 在宅医療情報連携加算の算定要件と施設基準
- 在宅医療における診療情報の活用シーン
2024年度の診療報酬改定によって、在宅医療情報連携加算が新設されます。医療機関と連携して診療情報を共有・活用することで、関係者間の情報共有にかかる負担を軽減できるほか、より質の高い在宅医療の提供につながります。
また、病院や訪問看護ステーションなどとの情報共有を円滑に行うには、オンラインで診療情報の記録・確認ができるアプリケーションの活用が有効です。
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