在宅療養移行加算とは。4つの種類と点数・算定要件について解説
在宅医療は、高齢になっても住み慣れた地域で自分らしく日常生活を送るために欠かせない医療サービスです。厚生労働省では、質の高い在宅医療を提供できる体制づくりを推進するために、2024年度の診療報酬改定において在宅療養移行加算の見直しが行われました。
病院・クリニック・訪問看護ステーションなどの担当者は、在宅療養移行加算の内容や加算点数、算定要件などについて理解しておくことが重要です。
この記事では、在宅療養移行加算の概要や種類、在宅医療への移行をスムーズに進めるポイントについて解説します。
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
目次[非表示]
- 1.在宅療養移行加算とは
- 2.在宅療養移行加算の種類
- 3.在宅療養ができる体制構築をスムーズに進めるポイント
- 3.1.地域の連携を強化する
- 3.2.医療連携ができるアプリケーションを活用する
- 4.まとめ
在宅療養移行加算とは
在宅療養移行加算は、医療機関がほかの医療機関や地域医師会などと連携して訪問診療が提供可能な体制を構築することを評価する加算です。
従来では、“継続診療加算”として訪問診療を提供する体制を有している医療機関を対象に加算が設けられていましたが、2022年度の診療報酬改定によって在宅療養移行加算が新設されました。
また、2024年6月1日から施行となる診療報酬改定では、対象となる施設が病院まで拡大されて、在宅療養を支援する診療所またはそれ以外の医療機関が行う訪問診療に関する評価が見直されています。
出典:厚生労働省『令和4年度診療報酬改定の概要』『令和6年度診療報酬改定の概要』『令和6年度診療報酬改定の基本方針』
在宅療養移行加算の種類
2024年度の診療報酬改定では、加算の種類が4つに細分化されており、訪問診療の体制や在宅療養支援診療所・病院との連携体制に関する評価が見直されています。
▼2024年度における診療報酬改定の変更点
在宅療養移行加算の種類 |
加算点数 |
|
改正前 |
在宅療養移行加算1 |
216点 |
在宅療養移行加算2 |
116点 |
|
改正後 |
在宅療養移行加算1 |
316点 |
在宅療養移行加算2(旧1) |
216点 |
|
在宅療養移行加算3 |
216点 |
|
在宅療養移行加算4(旧2) |
116点 |
厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』を基に作成
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
在宅療養移行加算1
在宅療養移行加算1では、以下の算定要件が定められています。
▼在宅療養移行加算1の算定要件
- 24時間の往診を行う体制を有する、もしくは市町村や地域医師会などの協力を得て往診体制を確保している
- 24時間の連絡を受ける体制を有する、もしくは市町村や地域医師会などの協力を得て連絡体制を確保している
- 在宅療養支援診療所や病院などと定期的な情報共有を行っている
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
在宅療養移行加算2
在宅療養移行加算2の算定要件は、診療報酬改定前に規定されていた旧在宅療養移行加算1と同様になっています。
▼在宅療養移行加算2の算定要件
- 24時間の往診を行う体制を有する、もしくは市町村や地域医師会などの協力を得て往診体制を確保している
- 24時間の連絡を受ける体制を有する、もしくは市町村や地域医師会などの協力を得て連絡体制を確保している
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』『令和4年度診療報酬改定の概要』
在宅療養移行加算3
診療報酬改定によって新設された在宅療養移行加算3では、24時間の往診に対応できる体制は必須とされていませんが、連絡体制や情報共有について一定の要件が定められています。
▼在宅療養移行加算3の算定要件
- 市町村や地域医師会などの協力を得て、患者に対して医療機関による往診を提供できる体制を確保している
- 24時間の連絡を受ける体制を有する、もしくは市町村や地域医師会などの協力を得て連絡体制を確保している
- 在宅療養支援診療所や病院などと定期的な情報共有を行っている
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』
在宅療養移行加算4
在宅療養移行加算4の算定要件は、診療報酬改定前に規定されていた旧在宅療養移行加算2と同様となっています。
▼在宅療養移行加算4の算定要件
- 市町村や地域医師会などの協力を得て、患者に対して医療機関による往診を提供できる体制を確保している
- 24時間の連絡を受ける体制を有する、もしくは市町村や地域医師会などの協力を得て連絡体制を確保している
出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』『令和4年度診療報酬改定の概要』
在宅療養ができる体制構築をスムーズに進めるポイント
病院を退院しても在宅療養が可能な体制を構築するためには、患者が安心して往診やケアを受けられる環境を整備することが重要です。
地域の連携を強化する
在宅療養によって継続したケアを行うには、医療機関だけでなく地域包括支援センターやケアマネジャーなどとの地域関係者と連携することが必要です。
在宅療養を行う患者のなかには、複数の医療機関に通院していたり、生活支援に関するサービスを必要としていたりすることがあります。
医師や看護師が患者の状態を正確に把握して必要なサポートにつなげるには、異なる職種の関係者が連携して、地域での包括的なケアを行える体制をつくることが重要です。
▼地域との連携による在宅医療への移行支援
- ケアマネジャーから提供された在宅での生活環境や家族の支援状況などの情報を踏まえて、退院計画を作成する
- 入院している医療機関でカンファレンスを開催して、訪問看護ステーションの看護師やケアマネジャーと生活支援に関する内容について相談する
- 退院後に患者の状況について主治医や看護師、ケアマネジャーなどと情報を共有して、問題がないかを確認する など
また、在宅医療に関わるほかの職種について学ぶ機会を設けることで、患者のサポートに関する理解や知識の向上につながります。
出典:厚生労働省『在宅移行支援の際の退院カンファレンスを題材とする地域包括ケアにおける医療介護連携・多職種協働の課題整理に関する調査研究事業報告書』『医療介護情報共有システム導入時の参考になる手引き』
医療連携ができるアプリケーションを活用する
在宅療養への移行とケアを支援するには、病院や訪問看護ステーションなどと患者の情報を共有できるアプリケーションを活用することも一つの方法です。
効率的かつきめ細かな在宅医療のサポートを行うには、医療やケアに携わる関係者間での円滑な情報共有が欠かせません。しかし、対面や電話、FAXで情報共有を行う場合には時間を要したり、情報伝達の漏れが発生したりする可能性があります。
在宅での生活状況や健康状態の変化などを記録してオンラインで共有できる体制を構築することで、医師が治療方針を検討したり、訪問看護師が速やかに医師の指示を求めたりできます。これにより、医療従事者の負担を軽減できるほか、患者に合った医療やケアの提供につながります。
まとめ
この記事では、在宅療養移行加算について以下の内容を解説しました。
- 在宅療養移行加算の概要
- 在宅療養移行加算の種類と算定要件
- 在宅療養への移行をスムーズに行うポイント
医療機関が在宅療養の訪問診療を行える体制を整備することで、在宅療養移行加算を算定できる可能性があります。加算の種類によって求められる訪問診療の体制や加算点数が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
また、在宅医療への移行をスムーズに行い、患者に寄り添った医療・ケアを継続するには、地域の連携強化を図るとともに、医療連携ができるアプリケーションの活用が有効です。
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