catch-img

腹膜透析患者にむくみが生じる原因とは。考えられる3つの対策

腹膜透析は、血液透析と比較して体への負担が少なく、患者自身の生活スタイルを維持しやすい透析療法とされています。

腹膜透析を受けている患者に見られることがある症状の一つに“むくみ”があります。むくみが生じている場合には、主治医への相談が必要になるほか、生活習慣の見直しが求められることがあります。

病院・訪問看護ステーションの担当者は、腹膜透析患者にむくみが生じる原因とリスクを把握したうえで、必要な対策を検討することが重要です。

この記事では、腹膜透析患者にむくみが生じる原因や考えられる3つの対策について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.腹膜透析患者にむくみが生じる原因
  2. 2.体内に余分な水分・塩分が溜ることによるリスク
  3. 3.腹膜透析患者のむくみが生じた場合に考えられる対策
    1. 3.1.➀食事・飲水の制限
    2. 3.2.②透析液の量・濃度・交換回数を調整する
    3. 3.3.③患者のドライウェイトを見直す
  4. 4.毎日の測定と記録を行うことが重要
  5. 5.まとめ


腹膜透析患者にむくみが生じる原因

腹膜透析患者にむくみが生じる原因には、以下が考えられます。


▼腹膜透析患者にむくみが生じる原因

  • 腹膜透析で体内の余分な水分・塩分を十分に除去できていない
  • 食事によって塩分を摂り過ぎている
  • 飲水量が多い など


腹膜透析は、腎臓のはたらきを人工的に補う透析方法の一種です。腹腔内に透析液を注入して、腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分・塩分を取り除く仕組みとなっています。

しかし、透析による除水が不十分な場合には、余分な水分・塩分が体内に残ったままとなり、むくみにつながるケースがあります。

また、腎臓のはたらきが弱まっている人が塩分の多い食事を摂ると、塩分の排出が不十分になり体内に溜まりやすくなります。塩分の多い食事は、のどが渇いて飲水量の増加にもつながるため、むくみが生じることがあります。

そのほか加齢や運動不足によって筋力が低下したり、座った姿勢を長時間維持したりすることで血流の流れが滞りやすくなり、むくみが出るケースも考えられます。

出典:厚生労働省『個別事項(その7:その他の論点)


▼腹膜透析患者の食事制限を行う方法については、こちらの記事で解説しています。

  腹膜透析患者の食事制限を行う方法。良好な状態を維持するには 腹膜透析において安定かつ良好な状態を維持するには、食事・飲水の摂り方を制限して体液量が過剰にならないように管理することが求められます。この記事では、腹膜透析患者の食事制限を行う方法や摂取基準の目安、注意点について解説します。 「カレイドタッチ」WEBサイト



体内に余分な水分・塩分が溜ることによるリスク

腹膜透析患者の体内に余分な水分・塩分が溜ると、以下のような状態となるリスクがあります。


▼むくみがもたらすと考えられるリスク

  • 心臓に負担がかかる
  • 高血圧になる など


体内に余分な水分・塩分が溜まると、血液中の水分量が増えることによって血圧が上昇して心臓に負担がかかります。また、塩分の過剰摂取は高血圧につながり、残腎機能の低下や心臓の合併症につながる可能性もあります。

残腎機能が低下すると、透析液の濃度を高める必要が出てくる可能性もあり、腹膜への負担を招くことにもつながるため、体内の水分・塩分量を適正に管理することが重要といえます。

出典:e-ヘルスネット『高血圧



腹膜透析患者のむくみが生じた場合に考えられる対策

高血圧による合併症や残腎機能の低下を防ぐには、摂取する水分・塩分量と透析による除水量を管理することが重要です。


➀食事・飲水の制限

水分・塩分の摂り過ぎによるむくみを防ぐには、食事・飲水を制限する対策が考えられます。腹膜透析によって排出できる除水量を踏まえて、除去できる範囲で食事を摂ることが重要です。

患者が1日のうちに取れる水分・塩分量の目安は、透析液と尿量を合わせた除水量を基に計算します。


▼腹膜透析患者の1日における水分・塩分摂取量の目安


目安
水分摂取量
透析による除水量(L)+尿量(L)
塩分摂取量
透析による除水量(L)×7.5+尿量(L)×5


水分は、1日に摂取する量と排出する量を同じにすることが求められます。1日当たりの尿量を測定して連日にわたって減少が見られる場合には、水分の摂取量を減らす必要があります。

また、慢性的に腎機能が低下している患者の場合には、塩分量を1日6グラム以下に制限することが目安とされています。塩分の摂取量が目安よりも多い場合には、減塩または食塩添加がない食品・調味料を使用したり、調理方法を見直したりして、むくみの状態を確認しながら調整することが必要です。


②透析液の量・濃度・交換回数を調整する

腹膜透析による除水が十分でないと考えられる場合には、透析液の量・濃度・交換回数などの調整を検討する必要があります。

腹膜透析患者にむくみが見られる場合には、透析によって十分な除水ができていないと考えられます。透析液の濃度を高くすると除水量を増やせるほか、腹膜内に透析液を貯留させる時間が長くなるほど多くの除水が期待できます。

ただし、腹膜透析は血液透析と比べて除水がゆるやかになるため、残腎機能が不足している場合には、血液透析との併用や移行を検討する必要があります。


③患者のドライウェイトを見直す

ドライウェイトとは、透析療法によって体内にある不要な水分・塩分を除去したあとの体重を指しており、腹膜透析後の目標体重として設定されます。

腹膜透析による除水量はドライウェイトを基に検討しますが、食生活や尿量、排便の状況などによって変化することがあるため、定期的に見直すことが必要です。

患者の状態に合ったドライウェイトを設定することで、体内に余分な水分・塩分が溜らない除水量や交換回数に調整できるようになり、むくみの防止につながります。



毎日の測定と記録を行うことが重要

腹膜透析患者にむくみが生じた場合に適切な対策を考えるとともに、体の変化を速やかに確認できるように、毎日の測定・記録を行うことが重要です。

主治医ときめ細かな情報共有を行うことで、患者に合った透析液の量や濃度を調整したり、食事・飲水の制限を行ったりして的確な治療方針を検討できます。


▼測定・記録する項目例

  • 体重
  • 血圧
  • 体温
  • 排液量
  • 尿量
  • 飲水量 など


また、訪問看護師が測定・記録を行う場合においても、主治医や病院の看護師と円滑な連携がとれる体制を整えておくことが必要です。患者の身体状況や生活状況、腹膜透析の情報などを共有することにより、患者に合ったきめ細かなサポートを行えるようになります。


▼記録ノートによる腹膜透析の管理については、こちらの記事で解説しています。

  腹膜透析は記録ノートによる管理が重要! 書き方と確認するポイントとは 体内の腹膜を利用して余分な水分・塩分や老廃物の除去を行う腹膜透析は、自宅で透析液のバッグ交換を行えることから、生活上の制約が少ない透析方法です。医師は、患者の腹膜機能や健康状態に応じて腹膜透析の処方を決定する必要があり、日常的に観察を行うことが求められます。病院・訪問看護ステーションにおいては、記録ノートに腹膜透析の状況を記載するように患者へ指示を行い、主治医への情報共有を行うことが必要です。この記事では、腹膜透析による記録ノートの書き方や確認できることについて解説します。 「カレイドタッチ」WEBサイト


まとめ

この記事では、腹膜透析によるむくみについて以下の内容を解説しました。


  • 腹膜透析患者にむくみが生じる原因
  • 体内に余分な水分・塩分が溜ることによるリスク
  • 腹膜透析患者のむくみが生じた場合に考えられる対策
  • 身体状況や生活状況の測定・記録について


腹膜透析患者にむくみが見られる場合には、体内に余分な水分・塩分が溜っており、腹膜透析による除水が十分に行えていない可能性が考えられます。体重や飲水量などを毎日測定して、変化がある場合には早期に主治医への相談を促すことが必要です。

また、訪問看護師が腹膜透析患者のサポートを行う場合には、測定・記録した患者の情報を主治医へスムーズに共有できる体制づくりが求められます。病院の医師・看護師と訪問看護師の連携を円滑化するには、専用のアプリケーションを活用することがおすすめです。

『kaleido TOUCH(カレイドタッチ)』は、病院と訪問看護ステーションの医療連携をサポートするアプリケーションです。患者の体調や腹膜透析の記録などをリアルタイムで共有できるため、患者に合った治療方針を検討・提案できます。


カレイドタッチがまるっと分かる資料のダウンロード【無料】はこちら

  kaleido TOUCH 紹介資料ダウンロード kaleido TOUCH(カレイドタッチ)のパンフレットをダウンロードいただけます。商品・サービスについての概要をまるっと知りたい方におススメです。 「カレイドタッチ」WEBサイト