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遠隔死亡診断補助加算が2022年度より新設。定義や詳しい算定要件を解説

患者が亡くなられた際には、医師が死亡後の診察を行って死亡診断書を交付することが必要です。しかし、死亡時に医師が遠方におり、直接訪問して診察を行うことが難しいケースも考えられます。このような場合に、ICTを活用して遠隔で死亡後の診察・診断(以下、死亡診断)を行う方法があります。

遠隔死亡診断補助加算は、遠隔での死亡診断に関する加算です。病院や訪問看護ステーションの担当者のなかには、「遠隔死亡診断補助加算にはどのような算定要件が設けられているのか」「遠隔で死亡診断を行う際の注意点はあるか」など気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、遠隔死亡診断補助加算の定義や算定要件、遠隔での死亡診断を行う際の注意点について解説します。


出典:厚生労働省『情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン』『令和6年度診療報酬改定の概要


目次[非表示]

  1. 1.遠隔死亡診断補助加算とは
  2. 2.遠隔死亡診断補助加算の算定要件
    1. 2.1.訪問看護ターミナルケア診療費
    2. 2.2.在宅ターミナルケア加算
  3. 3.遠隔死亡診断の看取りに関する研修内容
  4. 4.患者の死亡に関するそのほかの加算
  5. 5.遠隔死亡診断を行う際の注意点
    1. 5.1.遺族の心情に配慮する
    2. 5.2.リアルタイムにコミュニケーションをとれる端末を用いる
  6. 6.まとめ


遠隔死亡診断補助加算とは

遠隔死亡診断補助加算とは、診療報酬における加算の一つです。医師が行う死亡診断について、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が補助した場合に加算を取得できます。

遠隔死亡診断補助加算は、2022年度の診療報酬改定において医療保険の分野で新設されました。2024年6月1日からは介護保険にも同様の評価が設定されます。


▼遠隔死亡診断補助加算の点数

150点


なお、医療保険では“訪問看護ターミナルケア診療費”、介護保険では“在宅ターミナルケア加算”に遠隔死亡診断補助加算が含まれています。


出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』『令和4年度診療報酬改定の概要



遠隔死亡診断補助加算の算定要件

遠隔死亡診断補助加算では、医療保険の訪問看護ターミナルケア診療費と介護保険の在宅ターミナルケア加算においてそれぞれ算定要件が定められています。


訪問看護ターミナルケア診療費

訪問看護ターミナルケア診療費とは、主治医と連携のもと、訪問看護ステーションの看護師が在宅での終末期における看護を提供した場合に算定できる加算です。


▼遠隔死亡診断補助加算の算定要件

  • 施設に配置される看護師が、訪問看護ステーションの情報通信機器を用いた在宅での看取りに関する研修を受けている
  • 在宅患者訪問診療料の死亡診断加算を算定する患者について、研修を受けた看護師が情報通信機器を用いて医師による死亡診断の補助を行った


また、上記に含まれる“死亡診断加算”については一定の要件が定められています。訪問診療による死亡診断を行っていない場合でも、以下の要件を満たしており、『情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン』に基づいて遠隔での死亡診断を行う場合には算定することが可能です。


▼死亡診断加算(在宅患者訪問診療料)の要件

ア 当該患者に対して定期的・計画的な訪問診療を行っていたこと。

イ 正当な理由のために、医師が直接対面での死亡診断等を行うまでに12時間以上を要することが見込まれる状況であること。

ウ 特掲診療料の施設基準等の第四の四の三の三に規定する地域に居住している患者であって、連携する他の保険医療機関において区分番号「C005」在宅患者訪問看護・指導料の在宅ターミナルケア加算若しくは「C005-1-2」同一建物居住者訪問看護・指導料の同一建物居住者ターミナルケア加算又は連携する訪問看護ステーションにおいて訪問看護ターミナルケア療養費若しくは指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表の指定居宅サービス介護給付費単位数表の3のイ、ロ及びハの注15に掲げるターミナルケア加算を算定していること。

引用元:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要


※厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た情報通信機器


出典:厚生労働省『訪問看護療養費の取扱いの理解のために』『令和4年度診療報酬改定の概要』『令和6年度診療報酬改定の概要


在宅ターミナルケア加算

在宅ターミナルケア加算とは、保険医療機関における終末期の患者に対する医療・看護の実施について評価する加算です。


▼遠隔死亡診断補助加算の算定要件

  • 施設に配置される看護師が、情報通信機器を用いた在宅での看取りに関する研修を受けている
  • 在宅患者訪問診療料の死亡診断加算に規定する在宅ターミナルケア加算を算定している
  • 研修を受けた看護師が情報通信機器を用いて医師による死亡診断の補助を行った


上記に挙げた在宅ターミナルケア加算を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。


▼在宅ターミナルケア加算の要件

  • 死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に、2回以上の往診または訪問診療、または退院時の共同指導を行った
  • 診療内容の要点を診療録に記載している


また、ターミナルケアに取り組む際は、厚生労働省が定める『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』を踏まえて、患者本人や家族との話し合いを行い、ほかの関係者と連携して対応することが求められます。


出典:厚生労働省『令和6年度診療報酬改定の概要』『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン



遠隔死亡診断の看取りに関する研修内容

遠隔死亡診断補助加算の算定においては、看護師が情報通信機器を用いた在宅での看取りに関する研修を受けている必要があります。


▼看護師に対する主な研修内容

  • 法医学などに関する講義
  • 法医学に関する実地研修
  • 看護に関する講義・演習 など


看護に関する講義・演習には、ICTを利用した死亡診断を行う際に利用する機器を用いたシミュレーションが含まれています。


出典:厚生労働省『情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン』『令和4年度診療報酬改定の概要』『令和6年度診療報酬改定の概要



患者の死亡に関するそのほかの加算

患者の死亡に関する加算には、遠隔死亡診断補助加算のほかに死亡診断加算や看取り加算などがあります。


▼患者の死亡に関する加算

加算
概要
点数
死亡診断加算
在宅で療養を行っている患者が在宅で死亡した際に、死亡日に往診や訪問診療を行って死亡診断をした場合に算定される加算
200点
看取り加算
死亡日に往診または訪問診療を行い、在宅で患者を看取った場合に算定される加算
3,000点


看取り加算には死亡診断に関わる費用が含まれているため、看取り加算を算定した場合には死亡診断加算を算定できません。

また、看取り加算を算定するには、療養上の不安を解消するために患者本人と家族に対して十分な説明を行い、同意を得ておく必要があります。


出典:厚生労働省『【テーマ1】看取り 参考資料』『令和6年度診療報酬改定の概要



遠隔死亡診断を行う際の注意点

遠隔死亡診断を行う際は、遺族へ十分に配慮するとともに、医師と看護師で円滑なやり取りができる環境を整えることが重要です。


遺族の心情に配慮する

死亡診断を行う際には、遺族の心情に配慮が求められます。

死亡診断は、医師から死亡の事実を伝えるだけでなく、遺族がこれまでの経過や最期の状況についての医学的な説明を受ける機会となることから、慎重な対応が必要となります。

遠隔での死亡診断を行う際には、医師と看護師が亡くなられた人に対して礼意を示すとともに、遺族の心情に配慮して対応することが重要です。


出典:厚生労働省『情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン


リアルタイムにコミュニケーションをとれる端末を用いる

遠隔での死亡診断を行う際には、医師と看護師がいる現場でリアルタイムなコミュニケーションをとれる端末を使用することが重要です。

看護師は、情報通信機器を用いて医師の指示を受けながら、状況の報告やご遺体の観察などを行う必要があります。

情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン』では、医師とのコミュニケーションに使用する端末の条件として以下が挙げられています。


▼医師とのコミュニケーションに使用する端末の条件

  • 映像と音声によるリアルタイムのやり取りを双方向に行える
  • LTE環境もしくはそれに相当する通信速度がある
  • セキュリティ対策が行われた状態で文書・画像を送受信できる


出典:厚生労働省『情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン



まとめ

この記事では、遠隔死亡診断補助加算について以下の内容を解説しました。


  • 遠隔死亡診断補助加算の概要
  • 遠隔死亡診断補助加算の算定要件
  • 患者の死亡に関するそのほかの加算
  • 看護師が遠隔死亡診断の補助を行う際の注意点


情報通信機器を用いて医師による死亡診断を看護師が補助した場合には、遠隔死亡診断補助加算を算定できます。

算定には一定の要件が定められているほか、看取りを行う看護師への研修や、医師とコミュニケーションをとるための環境整備を行うことが必要になります。情報共有を円滑に行うためには、アプリケーションの活用が有効です。

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