僻地医療における看護師の課題と解決のポイント
僻地とは、近隣に医療機関がない無医地区や準無医地区などを指します。医療資源が限られている僻地では、看護師の労働環境や医療体制などに課題があるケースが考えられます。
僻地医療に携わっている医療従事者のなかには「僻地医療に従事する看護師にはどのような課題があるのか」「看護師の働きやすさを向上させる方法はないか」など調べている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、僻地医療における看護師の役割や課題、働きやすさを向上させるポイントについて解説します。
出典:内閣府『へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について』
目次[非表示]
- 1.僻地医療で期待される看護師の役割
- 2.僻地医療における看護師の課題
- 2.1.休暇を取りにくい場合がある
- 2.2.学習機会が不足しやすい
- 2.3.拠点病院や診療所間での連携が難しい
- 3.僻地医療に従事する看護師の働きやすさを向上するポイント
- 3.1.①看護師派遣を活用する
- 3.2.②特定行為研修制度を利用する
- 3.3.③ICTを活用して診療のサポートや医療機関の連携を強化する
- 4.まとめ
僻地医療で期待される看護師の役割
医師や看護師が不足しやすい僻地では、医療職種が限定されることから看護師の役割が大きくなりやすいと考えられます。
▼僻地医療で期待される看護師の役割
- 外来による診療のサポート
- 入院患者の観察と生活支援
- 救急搬送時における医師のサポート
- 訪問看護・在宅看護活動
- 医師と連携した患者・家族へのフォロー など
病院に通院する患者への対応だけでなく、医師による診療のサポート、在宅医療を行う患者への訪問看護など、担当する業務の範囲は広くなります。
医師が不在の場合には、応急処置をはじめとする初期対応を行ったり、医師と患者・家族の橋渡しとなって助言と指導を行ったりすることも期待されます。
出典:内閣府『へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について』/厚生労働省『ICTや特定行為研修修了看護師の導入によるへき地医療提供体制の研究』
僻地医療における看護師の課題
僻地医療に携わる看護師は、労働環境や医療機関同士の連携などについて課題を抱えやすいといえます。
休暇を取りにくい場合がある
僻地では、医療従事者の確保が難しいことから、人員不足によって看護師が休暇を取りにくくなる可能性があります。
休暇を取りたくても代わりとなる看護師を確保できず出勤せざるを得なくなったり、現場が忙しく休暇をとることに後ろめたさを感じたりするケースが考えられます。
出典:厚生労働省『令和4年版 厚生労働白書』
学習機会が不足しやすい
医療や看護に関する学習機会が不足しやすいことも僻地医療における課題の一つです。医療技術は日々進歩しており、看護師には新しい知識・技術を習得するための機会を確保することが求められます。
しかし、僻地医療では看護師の人員不足によって研修に参加する時間を確保できなかったり、緊急時に技術を実践する場面がなかったりして高度な知識・スキルの習得が難しい場合があります。
拠点病院や診療所間での連携が難しい
僻地医療の拠点となる病院やほかの診療所との連携が難しい場合、緊急時または医師が不在の際に迅速な対応ができなかったり、医療の支援を受けられなかったりするケースがあります。
看護師の人員不足に対応して住民の医療を確保するには、ほかの病院や診療所と連携して協働体制を構築することが求められます。また、地域の行政機関と連携して必要な医療体制を整備する支援を受けることも必要といえます。
出典:厚生労働省『へき地の医療体制構築に係る指針』
僻地医療に従事する看護師の働きやすさを向上するポイント
僻地医療に従事する看護師の働きやすさを向上するには、人員の確保や業務の効率化を図れる制度またはICT(情報通信技術)を活用することがポイントです。
①看護師派遣を活用する
看護師をはじめとする医療従事者が不足している場合には、看護師派遣を活用して人員を確保する方法があります。
これまで医師や看護師が行う医療関連業務について労働者派遣を行うことは原則禁止されていました。2021年に『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律』に関する施行令の一部が改定され、僻地へ医療従事者を派遣することが可能になりました。
▼僻地への派遣が認められている医療従事者
- 看護師
- 准看護師
- 薬剤師
- 臨床検査技師
- 診療放射線技師
看護師派遣を活用することで、僻地医療における人員不足の解消や医療の質向上につながると期待されています。
出典:厚生労働省『ICTや特定行為研修修了看護師の導入によるへき地医療提供体制の研究』『へき地の医療機関への看護師等の派遣等について』『へき地の医療機関への看護師等の労働者派遣について』
②特定行為研修制度を利用する
特定行為研修制度とは、手順書に基づいて一定の特定行為を行う際の高度かつ専門的な知識と技能の向上を図るための研修です。
研修を受けることで、医師の指示を待たずに看護師の判断で医療の補助行為を行えるようになり、タイムリーな処置につながります。
▼特定行為研修制度を活用して補助行為を実施する流れ
画像引用元:厚生労働省『特定行為に係る看護師の研修制度の概要』
なお、特定行為研修を受講した場合でも、患者の症状と看護師の能力を踏まえたうえで、医師が診療補助の可否や内容を指示することが求められます。
出典:厚生労働省『ICTや特定行為研修修了看護師の導入によるへき地医療提供体制の研究』『特定行為に係る看護師の研修制度の概要』
③ICTを活用して診療のサポートや医療機関の連携を強化する
住民に対する診療のサポートや医療機関同士の連携を強化するために、ICTを活用することも一つの方法です。
スマートフォンやタブレットに備わったカメラ・ビデオ機能を活用したり、情報共有が可能なアプリケーションを活用したりすることで、次のような対応が可能になります。
▼ICTの活用によって実施できること
- オンラインで患者・家族の相談対応を行う
- 患者の状態を画像や動画で記録して医療従事者間で共有する
- 医師が不在の場合に、看護師がビデオ通話またはチャットによる報告・相談を行う
- 救急時に後方支援病院と連携する など
ICTを活用して医療従事者または患者との情報共有が円滑になると、看護師の業務効率化やスピード感のある判断・対応が可能になります。
出典:厚生労働省『ICTや特定行為研修修了看護師の導入によるへき地医療提供体制の研究』『へき地診療所におけるICTを用いた看護実践の実態に関する検討』
まとめ
この記事では、僻地医療に従事する看護師について以下の内容を解説しました。
- 僻地医療で期待される看護師の役割
- 僻地医療における看護師の課題
- 僻地医療に従事する看護師の働きやすさを向上するポイント
僻地医療では医療資源が限られており、看護師が負担を抱えやすくなります。看護師の働きやすさを向上して住民の医療を確保するには、人員確保や業務の効率化につながる制度またはICTを活用することがポイントです。
例えば、看護師派遣や特定行為研修制度を導入したり、ICTを活用して医療機関の連携を強化したりすることが挙げられます。
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