医療分野でICTを活用して遠隔医療や業務効率化を目指すには
近年、デジタル技術の進展によって社会や産業などのさまざまな分野でICTの活用が広がっています。医療分野においても例外ではなく、医療資源の偏在解消や医療サービスの向上を図るためにICTの活用が推進されています。
一方、ICTの導入に際して懸念点があることを理由に、医療現場での十分な利活用を進められていないケースも見られています。
病院・訪問看護ステーションでは、医療分野のICT活用を推進するうえでの懸念点を踏まえたうえで、必要な対策を講じることが重要です。
この記事では、医療分野におけるICTの活用例や懸念点、ICTの利活用を推進するための対策について解説します。
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目次[非表示]
- 1.医療分野におけるICTの活用例
- 2.医療現場にICTを取り入れる際の懸念点
- 3.ICTの導入に関する懸念点への対策
- 3.1.➀補助金を活用する
- 3.2.②情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用する
- 3.3.③訪問看護師との連携を行う
- 4.まとめ
医療分野におけるICTの活用例
医療分野では、遠隔医療の実現や医療従事者の業務効率化などを図るために、ICTが活用されています。代表的な活用例には、以下が挙げられます。
➀オンライン診療
オンライン診療とは、パソコン・スマートフォン・タブレットなどの情報通信端末を使って自宅にいる患者に対して主治医による診療や薬の処方を行うことです。
僻地・離島などの医療機関へのアクセスが制限される地域や、通院が困難な患者の医療ニーズに対応するために需要が高まっています。
▼オンライン診療の一般的な仕組み
- オンライン診療の予約枠を設定してシステムでの予約受付を行う
- 必要に応じて患者の健診データや症状の詳細、身体部分の画像などを入力・アップロードしてもらう
- 診察室と患者の自宅をオンラインで接続してビデオ通話による診療を行う
- 患者が希望する薬局や患者の自宅に処方せんを送付する
- システム上で患者がクレジットカード決済を行う
オンライン診療の導入により、通院に伴う患者の負担を軽減して、在宅で継続した医療サービスを利用することが可能です。
また、対面診療を行わないことで感染症のリスクを軽減したり、訪問診療による医師の負担を軽減したりでき、効果的・効率的な医療体制の整備につながります。
②医療情報システム
医療情報システムとは、医療情報を電子化して医療機関内の部門間や関連職種での連携を行えるシステムです。
患者の身体情報や診療内容、治療の経過などをシステム上でリアルタイムに確認できるようになると、これまで電話・FAX・郵送で医療情報を共有していた作業が効率化されて、医療従事者の負担軽減につながります。
また、病院と訪問看護ステーションや介護施設、ケアマネージャーなどの外部職種の担当者と円滑な連携を行えると、質の高い地域医療の提供にも寄与します。
医療現場にICTを取り入れる際の懸念点
医療現場にICTを取り入れる際には、コストやセキュリティ、診療の質などについて懸念点があります。
▼ICTを取り入れる際の懸念点
- 導入にコストがかかる
- 医療情報を取り扱う際のセキュリティに不安がある
- 非対面での診療で対応が難しい場合がある など
オンライン診療や医療情報システムなどのICTを利用するには、システムとIT機器の導入にコストがかかります。
また、システムで取り扱う患者の個人情報は、生命や身体の安全に関わる情報となります。許可されていない人のアクセスや不正な改ざん、漏えいなどが生じないように、データを送受信・保存する際のセキュリティ管理が必須といえます。
そのほかオンライン診療には、カメラを介した非対面での診療に課題が残ります。カメラの映像だけでは患部を詳細に確認できない可能性があるほか、その場で処置・検査を行うことはできません。必要に応じて訪問診療または往診を依頼する必要があります。
ICTの導入に関する懸念点への対策
医療現場でICTの利活用を推進して、医療従事者の業務効率化や医療サービスの質向上につなげるには、懸念点に応じた対策を講じることが必要です。
➀補助金を活用する
システムやIT機器の導入にかかるコストを抑えるには、国または自治体が運用する補助金を活用することが有効です。医療・介護分野で活用できる補助金には、以下が挙げられます。
▼医療・介護分野で活用できる補助金
名称 |
概要 |
IT導入補助金 |
生産性向上を目指す中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際にかかる費用を補助する制度 |
介護テクノロジー導入支援事業 |
介護ロボット・介護ソフトウェア・IT関連機器の導入やネットワークの構築にかかる費用を補助する制度 |
医療施設等設備整備費補助金 |
遠隔医療を実施する際に必要なIT機器やソフトウェアなどを整備する際にかかる費用を補助する制度 |
対象となる医療機関の要件やITツール、ソフトウェアの条件などについては、各事業のホームページをご確認ください。
出典:経済産業省 中小企業庁『「IT導入補助金」でIT導入・DXによる生産性向上を支援!』/厚生労働省『介護テクノロジー導入支援事業』『遠隔医療に関するホームページ』
②情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用する
医療情報に対するセキュリティを確保するには、情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用することが求められます。
情報セキュリティマネジメントシステムとは、医療情報システムで扱う情報資産の機密性・完全性・可用性を保護するための体系的な仕組みを指します。PDCAモデルに基づいて情報資産の安全管理を継続的に行う体制を構築することが必要です。
▼PDCAモデルに基づく情報セキュリティマネジメントシステムの構築・運用
プロセス |
概要 |
Plan(計画) |
情報セキュリティの強化やリスクマネジメントを踏まえた基本方針・管理規定・安全管理計画などを策定する |
Do(実行) |
必要な運用体制を整備して、情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用する |
Check(点検) |
構築した情報セキュリティマネジメントシステムが規定どおりに運用されているか監視と見直しを行う |
Act(処置) |
セキュリティのリスクや運用の問題点を明らかにして、改善策を検討・実行する |
③訪問看護師との連携を行う
遠隔地にいる患者とのオンライン診療をスムーズに実施するには、訪問看護師と連携して診療の補助を行うことが重要です。患者が訪問看護師といる状態で医師とのオンライン診療を行う形態は“D to P with N”といわれます。
医師がオンライン診療を行う際に、患者の側にいる訪問看護師へ診療の補助行為に関する指示を行うことで、点滴や注射などの薬の処方にとどまらない医療行為を行えるようになります。
また、予測していなかった新たな症状が見つかった場合には、訪問看護師に対して血液検査や尿検査などの追加検査を指示することも可能です。これにより、往診が難しい患者にもきめ細かな医療サービスを提供できます。
▼D to P with Nによるオンライン診療を実施する際のポイント
- 患者の同意を得たうえで、医師が訪問看護師に患者の情報を共有しておく
- オンライン診療で十分な情報を確認できない場合には対面診療に切り替える
- 訪問看護師による診療の補助行為は、医師が作成した診療計画と訪問看護指示書に沿って予測された範囲内で行う
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まとめ
この記事では、医療分野のICT活用について以下の内容を解説しました。
- 医療分野におけるICTの活用方法
- 医療現場にICTを取り入れる際の懸念点
- ICTの導入に関する懸念点への対策
医療現場でICTを活用すると、医療従事者の業務効率化を図れるほか、遠隔医療による医療資源の偏在解消、医療サービスの向上にもつながると期待されています。
ただし、導入コストの負担や医療情報の取り扱いに関するセキュリティのリスク、オンライン診療による診療の限界などの懸念点があります。
ICTの導入コストを軽減するには、補助金を活用することが有効です。また、情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用して医療情報を保護すること、訪問看護師と連携してオンライン診療を実施することも重要といえます。
D to P with Nによってオンライン診療を実施する際は、アプリケーションを活用して医師と訪問看護師で情報連携を行える体制をつくることがポイントです。
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