腹膜透析患者が便秘になる原因とリスク。排便習慣を改善するための対策とは
腹膜透析を受けている患者が抱えやすい悩みの一つに“便秘”が挙げられます。
便秘は日々の食生活や運動量、ストレスなどが深く関係しています。特に腹膜透析では飲水の制限をはじめとするさまざまな原因によって便秘になる患者がいます。
病院・訪問看護ステーションの担当者は、腹膜透析患者のケアを行う際に排便の状況を確認して、生活習慣の指導や必要な処置について検討することが重要です。
この記事では、腹膜透析患者が便秘になる原因や便秘によるリスク、排便習慣を改善するための対策について解説します。
出典:厚生労働省『個別事項(その7)』/e-ヘルスネット『便秘と食習慣』
目次[非表示]
- 1.腹膜透析患者が便秘になる原因
- 2.腹膜透析患者の便秘によるリスク
- 3.腹膜透析患者の排便習慣を改善するための対策
- 3.1.➀適度な運動を促す
- 3.2.②規則正しい食生活の指導を行う
- 3.3.③便秘薬の処方を検討する
- 4.まとめ
腹膜透析患者が便秘になる原因
正常な排便習慣は、健康的な生活を支えるために欠かせない要素の一つです。しかし、腹膜透析患者はさまざまな原因によって便秘になりやすいと考えられています。
▼腹膜透析患者が便秘になる原因として考えられるケース
- 飲水の制限による水分不足
- 腹膜透析による排便リズムの乱れ
- 運動不足による腸の働きの低下
- 薬の副作用 など
腹膜透析では、血液透析と比べて飲水の制限は少なくなりますが、患者の腎機能や透析液の交換回数などによっては摂取量が制限されることがあります。体の中の水分が不足すると便が硬くなり便秘が起こりやすくなります。
腹膜透析中や日常生活で便意を我慢している患者は、排便リズムが乱れてしまい、便意を感じにくくなることも考えられます。また、運動不足も便秘を招く原因の一つです。運動不足によって腸への刺激や腹筋が弱くなると、便意を感じにくくなったり、スムーズに排便ができなくなったりする場合があります。
そのほか、腹膜透析治療の有無にかかわらず、慢性腎不全患者は血液中のリンや血圧を下げる薬などを服用している場合があり、副作用によって便秘になることがあります。
出典:厚生労働省『個別事項(その7)』/e-ヘルスネット『便秘と食習慣』
腹膜透析患者の便秘によるリスク
腹膜透析患者が慢性的な便秘になると、以下のようなリスクが懸念されます。
▼腹膜透析患者が便秘になることのリスク
- 透析液の注入・排出がスムーズにできなくなる
- 腹膜炎を引き起こす可能性がある
腹膜透析では、体の中にある腹膜にカテーテルを入れて、透析液を注入・排出することによって余分な水分・塩分や老廃物を取り除きます。便秘になると腹部が便によって圧迫されるため、カテーテルの接続チューブが折れ曲り、透析液の注入・排出がうまくできなくなるおそれがあります。
また、腹膜炎は腹腔内に細菌が入ることによって炎症を引き起こす合併症です。便秘になると腸管から細菌が透析液に移動しやすくなることから、腹膜炎を引き起こすリスクがあります。
出典:厚生労働省『個別事項(その7)』
腹膜透析患者の排便習慣を改善するための対策
病院・訪問看護ステーションでは、腹膜透析患者の排便状況を観察したうえで、便秘の人については排便習慣の改善を促すための対策が求められます。
➀適度な運動を促す
便秘を予防・改善するには、適度な運動を促すことが大切です。体を動かすことによって腸の動きを促すと、自然な便通につながりやすくなります。
腹膜透析患者については、主治医が一人ひとりの身体状態に合わせて無理のない範囲で行える運動方法を検討することが重要です。
▼日常生活で取り入れやすい適度な運動例
- 体操
- ウォーキング
- ストレッチ
- 軽スポーツ など
また、腹部に手を当てて円を描くようにやさしくマッサージすることにより、腸の動きを促す方法もあります。
②規則正しい食生活の指導を行う
腹膜透析患者の排便習慣を整えるには、毎日の食事を規則正しく摂るように指導することも必要といえます。
▼排便習慣を整えるための食生活
- 暴飲・暴食を避けて1日3食をきちんと摂取する
- 食物繊維が含まれる食品を摂取する など
毎朝朝食を摂ると体内のリズムを整えて胃や腸が刺激されるため、排便を促しやすくなります。また、食物繊維には便を柔らかくしたり、便の量を増やして腸の運動を活性化させたりして便通を整える働きがあるため、しっかり摂るように伝えることがポイントです。
▼食物繊維が含まれる代表的な食品
食物繊維の種類 |
食品 |
水溶性食物繊維 |
果物、野菜(にんじんやキャベツ)、海藻類 など |
不溶性食物繊維 |
根菜類、きのこ類、豆類 など |
なお、腹膜透析患者のケアを行う際は、本人や家族、あるいは訪問看護師によって体重・尿量・排便状況などを記録して、水分不足にならないように飲水量の調整を行うことも重要です。
出典:e-ヘルスネット『便秘と食習慣』
③便秘薬の処方を検討する
食生活の見直しや運動によって排便習慣の改善が見られない場合には、便秘薬を処方する場合があります。
腹膜透析患者の体調や疾病の有無、便秘の状態、ほかの服薬内容などを踏まえたうえで、処方の有無と便秘薬の種類を検討することが必要です。
まとめ
この記事では、腹膜透析患者の便秘について以下の内容を解説しました。
- 腹膜透析患者が便秘になる原因
- 腹膜透析患者の便秘によるリスク
- 腹膜透析患者の排便習慣を改善するための対策
腹膜透析患者は、水分不足や排便リズムの乱れ、運動不足などによって便秘になることがあります。便秘になると透析液の注入・排出がうまく行えなくなったり、腸内の細菌が透析液に移動して腹膜炎を発症したりするリスクがあります。
病院・訪問看護ステーションでは、腹膜透析患者の排便状況に応じて運動や規則正しい食生活の指導を行うことが求められます。また、訪問看護師がケアを行う際には、体重・尿量・排便状況などの情報を主治医と共有して、患者に合った処置・指示を速やかに行える体制をつくることも重要です。
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