高齢者の在宅医療が注目される理由。課題を解決するための取り組みとは
高齢になっても住み慣れた地域で患者が自分らしい生活を続けられるように、病院・訪問看護・介護福祉などが連携して在宅医療を提供できる体制づくりが求められています。
一方で、患者や家族による在宅医療のニーズに対して、十分に応えられていないという医療機関も見られています。
病院・訪問看護ステーションでは、在宅医療の現状と課題を踏まえたうえで、高齢者に寄り添った在宅医療を提供するための取り組みを行うことが重要です。
この記事では、高齢者の在宅医療が注目される理由や課題、病院・訪問看護ステーションに求められる取り組みについて解説します。
目次[非表示]
- 1.高齢者の在宅医療が注目される理由
- 1.1.高齢化の進行
- 1.2.在宅緩和ケアに対するニーズの高まり
- 2.高齢者の在宅医療が抱える課題
- 2.1.在宅医療に携わる医療従事者の確保
- 2.2.医療機能の連携
- 3.高齢者に寄り添った在宅医療を提供するための取り組み
- 4.まとめ
高齢者の在宅医療が注目される理由
高齢者の在宅医療が注目される理由には、国内における高齢化の進行や在宅緩和ケアに対するニーズの高まりなどが挙げられます。
高齢化の進行
内閣府の『令和6年版 高齢社会白書』によると、日本の総人口が減少過程に入るなか、65歳以上となる高齢者の数は増加しており、2023年10月1日時点の高齢化率は29.1%となっています。
2037年には国民の3人に1人が65歳以上になると見込まれており、地域における医療・介護のニーズはより一層高まると考えられます。また、65歳以上の一人暮らし世帯も増加傾向にあり、自宅での療養や通院において家族のサポートを受けられない人もいます。
▼65歳以上の一人暮らし世帯の動向
画像引用元:内閣府『令和6年版 高齢社会白書 3 家族と世帯』
高齢者が病気や要介護になっても、住み慣れた地域で生活を送れるようにするには、病院・訪問看護ステーション・介護福祉施設などと連携して在宅医療を提供できる体制が求められます。
出典:内閣府『令和6年版 高齢社会白書 3 家族と世帯』
在宅緩和ケアに対するニーズの高まり
在宅緩和ケアとは、生命予後にかかわる病気を抱える患者とその家族に対して、心と体のつらさを和らげるケアを主に自宅で行うことです。
厚生労働省の『令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査』によると、重い疾患や慢性疾患を抱えており、生命予後が限られている場合に「自宅で最期を過ごしたい」と答える人が一定数いることが報告されています。
▼人生の最終段階において最期を迎えたい場所
画像引用元:厚生労働省『令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査』
また、自宅を選ばなかった理由では、「介護してくれる家族等に負担がかかるから」といった回答がもっとも多い結果となりました。
在宅医療の体制を構築して、主治医による訪問診療を行ったり、訪問看護師が療養中の生活支援を行ったりすることにより、緩和ケアを希望する患者への継続的な医療の提供が可能になります。
▼在宅緩和ケアについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
出典:厚生労働省『緩和ケア』『令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査』
高齢者の在宅医療が抱える課題
高齢者に在宅医療を提供する際の課題には、医療従事者の確保や医療機能の連携などが挙げられます。
在宅医療に携わる医療従事者の確保
厚生労働省の『在宅医療連携モデル構築のための実態調査』によると、在宅医療を継続するうえでの課題として、医療従事者のリソースに関する内容が多く挙げられています。
▼在宅医療を継続するうえでの病院・診療所の課題
- 患者の自宅に訪問する時間を確保できない
- 医師が高齢化している
- 医師以外の医療・介護スタッフが不足している
- 医師が不足している など
在宅医療を提供するには、病院の医師が通常の診療に対応しながら患者の自宅に出向いて訪問診療や往診を行う必要があり、移動による負担がかかります。
また、訪問看護や介護を行うスタッフには、24時間体制でのケアと緊急時の対応も求められるため、1人当たりの負担が大きくなりやすいと考えられます。
出典:厚生労働省 『在宅医療連携モデル構築のための実態調査』
医療機能の連携
在宅医療を提供するには、地域の病院や訪問看護ステーション、介護福祉施設などの医療機能を連携させることが求められます。
▼医療機能の連携体制
医療機能 |
役割 |
1.退院支援 |
入院中の医療機関と在宅医療に関わる医療機関が連携して、退院後に切れ目なく在宅医療へ移行できるようにする |
2.日常の療養支援 |
在宅医療を支援する医療機関と多職種が連携して、緩和ケアの提供や家族への支援を行う |
3.急変時の対応 |
患者の病状が急変した際に、医師による往診や訪問看護の実施、入院病床の確保を行う |
4.看取り |
患者が望む場所で看取りを実施する |
在宅医療にかかわる病院・診療所では、基幹病院や多職種との連携体制を構築してて、包括的かつ継続的な医療を提供できるようにすることが重要です。
出典:厚生労働省『在宅医療の体制整備について』
高齢者に寄り添った在宅医療を提供するための取り組み
高齢者に寄り添った在宅医療を提供するには、医療・介護・生活支援などを地域で一貫して提供できる体制づくりや、ITを活用して関係機関との連携を円滑化することがポイントといえます。
➀地域包括ケアシステムの構築
地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で最期まで過ごすために、医療・介護・予防・住まい・生活支援を包括的に確保するための体制です。
▼地域包括ケアシステムを踏まえた在宅医療の提供体制
画像引用元:厚生労働省『在宅医療・介護連携推進事業の取組について』
地域の医療機関や訪問看護ステーション、介護福祉施設などの関連機関と連携したうえで、退院時から看取りまで継続的な在宅医療を提供できるように調整を行うことが必要です。
▼地域の医療連携についてはこちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『在宅医療・介護連携推進事業の取組について』
②医療機関と多職種をつなぐアプリケーションの導入
質の高い在宅医療を効率的に提供するには、医療機関と多職種の情報共有を促進するアプリケーションを活用することも一つの方法です。
オンラインで患者の基本情報やケアの記録、体調の変化などを共有することにより、病院と多職種による連絡業務を効率化できるほか、急変時の迅速な対応につなげられます。
アプリケーションを導入する際は、チャットルームの作成やビデオ通話などの機能が備わったものを選ぶと、必要な情報を速やかに共有・確認しやすくなります。
まとめ
この記事では、高齢者の在宅医療について以下の内容を解説しました。
- 高齢者の在宅医療が注目される理由
- 在宅医療が抱える課題
- 高齢者に寄り添った在宅医療を提供するための取り組み
高齢化の進行や緩和ケアに対するニーズの高まりなどを理由に、患者が住み慣れた自宅で療養・ケアを継続できる在宅医療の提供が求められています。
そのためには、医療・介護・生活支援などを一体的に提供する地域包括ケアシステムを構築するとともに、医療機関と多職種の連携を円滑化するアプリケーションを活用することがポイントです。
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