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共同意思決定(SDM)を支援するツールとは。患者の意思を尊重した医療方針を決定するには

近年、医療現場でさまざまな意思決定を行う際に、医師が主導するのではなく患者の自律性や価値観などを尊重する共同意思決定(以下、SDM)という概念が重要視されています。

SDMは、医療の意思決定に患者の参加を促して、個人の要望に沿った選択を行うためのプロセスとして、腎代替療法の選択やがん検診などに取り入れられています。

一方、日本におけるSDMでは、患者への一方的な情報提供やコミュニケーションの不足によって、医療の選択肢について十分に理解しないまま意思決定が行われることも少なくありません。

患者の知識レベルにかかわらず、正しい情報提供と価値観の共有を行えるように、さまざまなツールを活用して対話を行うことが求められます。

この記事では、SDMに取り組む際にツールを活用する目的と、患者への情報提供やコミュニケーションを支援するツールについて解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.SDMを支援するツールを活用する目的
  2. 2.SDMを支援するツール
    1. 2.1.➀質問促進パンフレット
    2. 2.2.②治療法選択支援ツール
    3. 2.3.③医療従事者向けの教育サポートツール
    4. 2.4.④医療・ケアチームの情報共有を円滑化するツール
  3. 3.まとめ


SDMを支援するツールを活用する目的

SDMに取り組む際にツールを活用する目的には、主に以下が挙げられます。


▼ツールを活用する目的

  • 患者に対して医療・ケアの選択肢に関する情報提供を行う
  • 患者と医師の話し合いを促進する
  • 医療・ケアチーム間で情報共有を行う など


患者の価値観を踏まえて医療の意思決定を行うには、可能性のある選択肢やリスクなどについて正しい情報提供が求められます。しかし、患者が複雑かつ専門的な医療の知識を理解することは簡単ではありません。

意思決定に必要な情報を分かりやすく伝えて、医師との話し合いに意欲的な参加を促すために、ツールの活用が必要といえます。

また、SDMに参加する医療・ケアチームは、患者との話し合いを通してどのような治療法やケアを選択するか、意思決定を一緒に行います。患者の価値観をより深く理解するために、話し合いのプロセスを医療・ケアチームで共有できるツールを活用することも重要です。

SDMのプロセスや看護師の役割についてはこちらの記事をご確認ください。

  SDM(共同意思決定支援)における看護師の役割。患者と対話するプロセスとは 医療従事者には、医学的な根拠だけでなく患者の希望に合った治療法の選択が求められます。そこで注目されている概念が“SDM(共同意思決定支援)”です。この記事では、SDMを実践する手法や課題、看護師に求められる役割について解説します。 「カレイドタッチ」WEBサイト


出典:厚生労働省『がん検診 Shared Decision Making(SDM) 運用マニュアル 2022 年度版



SDMを支援するツール

SDMを支援するツールを活用すると、専門的な医療情報を分かりやすく説明して、患者と医師、チーム関係者間でのコミュニケーションを促進できます。


➀質問促進パンフレット

質問促進パンフレットは、患者が医師に対して聞きたいこと・話したいことを共有できるようにしたツールです。

病状や治療方針などを話し合う最初のステップにおいて、患者と医師が交わす質問を網羅したパンフレットを活用することで、疑問・抵抗感をなくしてよりよいコミュニケーションにつながると考えられます。

診療・治療の内容に応じてさまざまな種類の質問促進パンフレットが開発されています。


▼質問促進パンフレットの活用方法

  1. 患者の診療・治療の内容に応じた質問促進パンフレットを選択する
  2. 医師との面談の前に患者自身で尋ねたい質問にチェックを入れてもらう
  3. チェックの内容を踏まえて患者と医師、家族などとの話し合いを行う


②治療法選択支援ツール

治療法選択支援ツールは、患者にとって最善の治療法を選択できるように、医療情報の説明と意思決定を支援するためのツールです。

患者の価値観を把握するための情報交換を行ったり、写真やイラストを用いながら患者へ治療法について説明したりする際に役立ちます。


▼治療法選択支援ツールの活用方法

  1. 患者の家族構成や生活環境、習慣、過ごし方などを共有してもらう
  2. 病気や治療法に関する患者の理解度を確認して説明を行う
  3. 今後の治療・ケアに対する思いや要望を整理してもらう
  4. 面談を行った日時・内容・医師のコメントを記録して、患者や家族、医療・ケアチームで共有する


③医療従事者向けの教育サポートツール

医療従事者がSDMを行ううえでの知識や患者へのヒアリング、アドバイスの方法などを学習するための教育サポートツールがあります。

SDMのよくある課題に「医療従事者がSDMの概念を十分に理解できていない」「SDMの教育機会を得られていない」などが挙げられます。

診療・治療の過程でSDMのプロセスを組み込むには、医療・ケアチームの正しい理解とコミュニケーションスキルの習得が必要と考えられます。


▼教育サポートツールの利用方法

  1. SDMの勉強会を実施して、基本概念や意思決定のプロセスを理解する
  2. SDMの実践手順・手法に基づいて患者との話し合いを行う


④医療・ケアチームの情報共有を円滑化するツール

SDMによって患者の意思決定を支援するには、医療・ケアチームで話し合いの経緯や患者の要望などを共有できるツールが役立ちます。

患者と家族にとって身近に接する機会の多い看護師や訪問看護師には、治療に関する疑問・不安を相談しやすいと考えられます。

病院や訪問看護ステーションにおいて患者に関する情報を共有するツールがあると、患者の気持ちに寄り添ったケアや意向を踏まえた治療方針を検討できるようになり、一貫した支援につながります。

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まとめ

この記事では、SDMを支援するツールについて以下の内容を解説しました。


  • SDMを支援するツールの活用目的
  • SDMを支援するツールの紹介


医療現場で意思決定を行う際には、SDMのプロセスを組み込んで「患者がどのような治療法やケアを望んでいるか」十分な情報交換を行うことが必要です。

専門的な医学情報を分かりやすく説明して理解を促すとともに、患者と医師のよりよいコミュニケーションを行うために、SDMを支援するツールが役立ちます。また、SDMを通して得られた情報については、医療・ケアチーム全体で共有して治療方針の検討・提案につなげることが求められます。

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